景気の見方読み方
Mai.10

2010.5.1

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「日本はギリシャに非ず」

はじめに> <財政問題は深刻だが> <国内資金で賄えている> 
国債暴落???> <ギリシャとの違い> <30年後は不安> <頭の体操


<はじめに>
 

景気に関しては、弱気派が一層黙り込んでしまい、議論の相手がいなくなってしまったので、今回は別の悲観派を攻撃してみましょう。今回の相手は、ギリシャ問題の深刻化を契機として増え始めた「とんでも話」、すなわち「日本国の財政破綻」論です。

<財政問題は深刻だが>up
 

日本の財政問題が深刻である事は、万人の認める所です。「このまま財政赤字が減らなければ、いつの日にか国債の正常な形での償還が困難になりかねない」という事も、多くの人が認める所です。
少子高齢化が進んで作る人より使う人が圧倒的に多くなれば、日本の経常収支が赤字に陥り、国内で国債が消化できなくなるかも知れません。そうなれば、事態は一層深刻になりかねません。
しかし、だからと言って、今現在の日本をギリシャと同じような視点で論じる事は極めて不適切です。その最大の理由は、日本の経常収支が黒字だからです。

今後20年以内に日本国が財政破綻して、国債が償還出来なくなる可能性は、殆んどゼロだと言えるでしょう。その理由は以下のとおりです。
<国内資金で賄えている>up
 

経常収支が黒字だということは、国全体としてみた場合に、外国に「ツケ」で物を売っている事になります。すなわち、国全体としてみた場合、外国に対する貸出が増えているわけです。これは、裏を返せば、政府が財政赤字である分以上に、誰かが黒字(儲かっているという意味ではなく、資金に余裕があるという意味)だということです。
実際、国債保有者を見ると、ほとんどが日本人(主には個人、法人などから預金を受け入れている金融機関)で、外国人の比率は極めて低いものに止まっています。
「国債発行残高が個人金融資産残高を上回ると国債が消化できなくなる」という人もいますが、企業が買えば良いのですから、問題ありません。実際には企業が銀行からの借金を返済し、銀行がその資金で国債を買う事になるのでしょう。昨今の企業が借入の返済に熱心であることを考えれば、これは充分にあり得る事だと思われます。
それでは、景気が回復して企業に資金需要が出てきて、銀行借入の返済を止め、それによって銀行が国債を買えなくなったら何が起きるでしょうか?仮にそうなった場合には、日銀が企業の資金需要に見合った資金を市場に供給することになるでしょうから、心配いりません。他にも安心材料はあります。景気がよくなれば、財政赤字が縮小します。税収があがると同時に景気対策の必要性が減りますから、景気回復は財政赤字縮小という金の卵を産む鶏なのです。景気がよくなれば、雇用が増えて個人の所得が増え、国債を購入する余力が増加します。また、海外から日本の民間部門への投資が増加し、民間部門の資金余剰が拡大するかもしれません。

それでは、日本人が国債を買わずに資金を海外投資に振り向けるようになったらどうなるでしょうか。そうなれば、ドル高円安になり、輸出が増加し、国内の景気が良くなり、財政収支は改善するでしょう。重要な事は、現在の日本に足りないのは需要であって、供給力は有り余っているという事です。ドル高になって日本製品への需要が増せば、いくらでも対応できる潜在的な能力を日本経済は有しているのです。
<国債暴落???>up
 

日本政府の借金が増え続けると、日本国債が格下げされ、長期国債の相場が暴落するという人もいます。しかし、長期国債の利回りは基本的に「短期国債への投資を10年間にわたって続けた場合と、長期国債を買って持っている場合の、いずれが得か」という判断で決まるわけですから、国民が冷静に判断すれば、それほど利回りが高騰するはずはない(=国債相場が暴落するはずはない)と思います。
リーマン・ショックで明らかになったように、借金で投資をしている機関投資家には「売りたくないけれども売らなくてはならない」場合があり、それが有価証券価格の暴落をもたらしかねないわけですが、日本国債を保有しているのは邦銀ですから、邦銀が資金難から国債を投売りする事は考えにくいでしょう。

百歩譲って、長期国債の相場が暴落したとしても、国の発行する国債を短期国債にすれば良いだけの話です。期間3ヶ月の国債は、今後3ヶ月の金融政策の見通しで利回りが決まりますから、極めて低金利での資金調達を続ける事は可能でしょう。
<ギリシャとの違い>up
 

ギリシャと日本の最大の違いは、上記のように、財政赤字が国内資金で賄えているという事です。海外からの投資資金は、不安心理から一斉に引き揚げられる事がありますが、国内資金による投資は一斉に海外に流出する可能性がはるかに低いからです。加えて、万が一資金が海外に流出しても、資金が海外に流出して国内が資金不足になった分は日銀が新たに資金供給を行なえばよいので、国内経済が本格的な資金不足に陥る心配は無いのです。「ギリシャ政府は勝手にユーロやドルの紙幣を印刷できないが、日銀は円の紙幣を印刷出来る」というわけです。(紙幣を印刷するとインフレになるという人もいるでしょうが、ここで議論しているのは国内で資金が足りなくなった場合の話であり、国内に資金がダブついてインフレになるという話とは区別して考える必要があります。)
他にも、重要な違いとして、日本は供給過剰の経済であって、ドル高円安によって景気が拡大する余地が大きいという事です。ギリシャは、そもそも観光以外の産業が乏しく、供給力にネックがある上に、ユーロに加盟したことで自国通貨安による景気拡大のチャンスを放棄しているのです。

若干脱線しますが、ギリシャの方が日本よりも恵まれている面もあります。自国が小国で、周辺に経済的に豊かな大国が数多く存在しているという事です。財政再建を進めて国内で需要が減少しても、周辺諸国に製品を輸出したり余剰労働力を輸出(出稼ぎ)したりする事が容易なのです。一方で、日本で財政再建を進めると、余剰労働力の輸出が困難なため、雇用減→所得減→消費減→売上減→生産減→雇用減という不況のスパイラルに陥る可能性が高いのです。この違いも、財政政策を論じる際には考慮する必要があるでしょう。日本では性急な緊縮財政はかえって財政赤字を増加させかねないのです。
<30年後は不安>up
 

30年後は、日本が少子高齢化で経常収支赤字に陥り、財政赤字を外国からの資金に頼る時代になっているかもしれません。そうなると、ギリシャと同じ目に遭う可能性が出てきます。

もっとも、その場合でも政府が間違えさえしなければ、「日本が対外純債務国に転落する前に、インフレ政策と大増税を組み合わせる荒療治を行なう」事により、国債がデフォルトする事は避けられるでしょう。そうすれば、日本が国際金融市場を混乱させる事にはならないでしょう。政府が「インフレと大増税」よりも「国債を踏み倒す」方がマシだと考えれば別ですが。(その頃には筆者は天国にいるでしょうから、政府が誤まらないことを天国から祈る事にしましょう)。
<頭の体操>up
 

以下は、暴論というか、頭の体操です。「30年後にハイパーインフレにより借金を帳消しにする」よりは、「今から毎年5%ずつインフレにしていく」方が良いのでしょうか。そうであれば、以下の選択肢はどうでしょうか。
(1)日銀が大量の長期国債を購入することで、市中に大量の資金を供給する。それによりインフレになれば、それは結構な事である。それにより、インフレにならなければ、市中の投資家が受け取るはずであった国債の利子を日銀が受け取るので、政府部門全体としての収益が改善する。
(2)「1ドル=100円で政府が無制限にドル買い介入する」と宣言する。それにより、日本人が安心してドル預金を行なう事が出来るようになり、ドル高円安が進む。それにより、景気が回復して税収が上がる。同時に、円安による輸入物価の上昇で国内物価も上昇する。

上記を「暴論である」と切り捨てるのは簡単です。しかし、「そうした政策を採ると如何なる問題が生じるのか」を考えてみる頭の体操が、何か新しい発見に繋がるかもしれませんから、少しだけ考えて見ていただければ幸いです。

今回は以上です。
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