もっとも、本件は一面では、貿易摩擦の側面を持っています。本来行なわれなければならない非難を遥かに超えた厳しいバッシングが行なわれているからです。全世界でリコールが行なわれているのに、米国だけで厳しくバッシングを受けているという事、米国内でもトヨタの工場のある地域とそれ以外で大きな温度差があること、などが、貿易摩擦の側面を照らし出しています。
思えば、戦後の日米経済関係の歴史は、相当大きな部分を貿易摩擦が占めてきました。最初は、繊維や鉄鋼や自動車といった個別品目について、日本製品の脅威から国内特定産業を守る事が主眼でした。この段階では、自主規制が主に用いられました。これは、日本企業にとっては打撃でしたが、むしろ日本製品の優秀さをアピールする側面も持ち合わせており、長期的に見れば日本にとって悪い話とばかりは言えなかったわけです。ダンピングという批判も頻繁に行なわれてきましたが、これも日本製品自体の問題を指摘するものではなく、むしろ「安くて良い物を日本企業が作っているのに、米国政府が安すぎると批判している」という滑稽な印象も与えかねないものでした。
その後は、個別産業の保護という観点が薄れ、日本市場は閉鎖的である、といった観点に貿易摩擦がシフトしていき、日米構造協議などが行なわれました。時代は、日本経済が世界一であると言われ、米国民が日本経済に対する恐怖心を募らせていた時期であり、世界一の座を追われかねないというフラストレーションが日本叩きの原動力となったのです。火に油を注いだのが、日本企業によるロックフェラーセンター買収だったと言えるでしょう。
構造協議は、個別の日本製品に問題が無いから市場の閉鎖性くらいしか米国側の主張ポイントが無い、という実情を明らかにしたものであり、それが一層米国民のフラストレーションを高めた、という事もあったようです。 |