May.00
<市場の景況感と景気実態との乖離について><(参考)景気の実態について><需要項目面><生産、企業収益など> <Nov.00 最近の日本の景気をどう見るか>へ戻る
このところ、株価が下がり、長期金利が下がり、円が安くなっている。米国NASDAQの調整などといった海外要因の影響もあろうが、これを差し引いても市場の景況感が今一つ現実の景気回復を織り込めていないものと推測される。市場関係者のコメントを見ても、日本の景気については今一つであるという印象を受けている人が多い模様である。 一方で、景気実態は着実に改善しつつある。設備投資の先行指標を見ても在庫循環を見ても、景気が自律回復軌道に乗りつつある事を強く示唆しており、外需についても、内外成長率格差は依然として大きく、一方で円高の影響は一巡しつつあることから、実質ベースでは急速に拡大しつつある。 個人消費の伸び悩みを指摘する声は多いが、消費者コンフィデンスが98年当時とは比較にならないほど改善しており、所得環境も緩やかながら改善に向かいつつある事を考えると、消費が回復に向かうのも時間の問題であると言えよう。 公共投資や住宅投資は既に景気底支えの大役を終え、次第に減少していくものと思われるが、自律回復の足を引っ張るようなネガティブな影響は見込まれない。 政府の経済見通しは2000年度1%成長というものであり、民間調査機関の見通しも平均すれば概ね同レベルにあるが、例えばGDPに占めるウエイトが16%である設備投資が10%伸びただけでも寄与度がこれを大きく上回ってしまうことを考えると、政府経済見通しは楽に達成できる状況にあるわけである。 このように、市場参加者の景況感と景気実態とが乖離している状況は96年度にも見られた。当時の日本経済は、実体経済が相当好調で結果としては4%を超える成長を達成した一方で、市場参加者の景況感は弱気であり、特に長期債市場においては史上最低水準の金利が更に低下を続けるといった状況であった。 しかし、当時はいくつもの特殊事情があったわけであり、今回とは様々な点で異なるという事には留意が必要である。第一に、「今の景気はともかく、来年度には消費税率が引き上げられて景気が悪化するであろう」と予想が広く行われていたし、客観的にもこれは合理的な予想であったが、今回は差し迫った景気悪化要因は見当たらない。第二に、当時はエコノミスト達の中にも弱気の景気見通しが多かったが、これには銀行系シンクタンクを中心に同僚が不良債権処理に追われている時にマクロ経済見通しに強気になれなかったという「不運」も影響していた。しかし、今回は銀行の不良債権処理に目処が立っており、前回のような「不運」は見込まれないわけである。 こうした事を考えると、96年度とは異なり、市場の景況感は徐々に改善していく可能性が高いと思われる。 但し、市場自体は景況感のみで動くわけではなく、需給や米国株価動向等に大きく影響されるため、必ずしも「景況感が改善すれば、株高、金利高、円高に進む」というわけではない事には留意が必要であろう。 今一つ留意すべきはリスクシナリオである。1)米国株価急落に伴う景気後退(詳しくは4月18日付米国トピックスレポート参照)、2)大幅な円高の進行、3)日本政府の景気回復優先路線の性急かつ大幅な転換、等の場合には、景気実態の方が市場の景況感の方に鞘寄せされていくことになろう。
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