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景気の見方読み方
Sep.09

2009.9.1

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「政権交代の経済への影響について」

はじめに> <政権交代を選択した国民> <バラマキ批判について
弱者保護政策> <官僚支配について> <洪水の功罪> <ハイリスク・ハイリターン


はじめに
 

景気については、世界的規模での回復が広く認識されるようになりました。政策的な失敗(性急な財政再建策など)が無ければ景気は再失速しない、という事を弱気派も認め始めています。強気派の筆者としては、予測が当たって喜ばしいと同時に、論点が乏しくなって景気論議に対する世の中の関心が薄れていく事が懸念されます。

一方国内政治を見ると、大方の予想どおり政権交代が実現しました。そこで今回は、日本の政権交代が経済に与える影響について考えてみましょう。
政権交代を選択した国民up
 

今次選挙の一つの側面は、「自民党をぶっ壊す」と宣言した小泉元首相の宣言が成就したという事でしょう。自民党の支持基盤を衰弱させ、自民党内に政策の対立軸を作ることにより、利権集団の連合体であった自民党が自壊したわけです。
今次選挙の今ひとつの側面は、国民が政権交代に投票したという事でしょう。民主党の政策を評価して投票した人よりも、閉塞感から「政権を交代させる」という選択肢に賭けた有権者が多かったのだと思います。今回の選挙の特徴は、政権選択選挙でありながら、政策の対立軸が最後まで見えなかった事です。前回の選挙で華々しく繰り広げられた「小泉構造改革を支持するのか否か」、といった政策論争が今回は殆どありませんでした。

筆者も、民主党政権になったら日本の政治や経済がどう変化するのか、結局最後まで見えませんでした。おぼろげに見えているのは「自民党政権と同様のバラマキ政策である」という点と、「弱者保護を掲げている」という点と、「官僚と共存共栄を図るのではなく、政治が官僚を支配しようとする」という点だけです

 

バラマキ批判についてup
 

民主党のマニフェストがバラマキのオンパレードであるという批判があります。筆者もバラマキであると思います。自民党が公共投資等々という企業目線のバラマキを行なっていたのに対し、子供手当て等々という個人目線のバラマキを行なうというだけの事です。
しかし、短期的にはバラマキが必要な経済状態ですから、その事自体を批判する必要は無いと考えています。今は、財政赤字に目をつぶってバラマキに徹する時なのです。景気回復は税収増という金の卵を産む鶏であり、財政再建を焦りすぎて景気を腰折れさせてしまう事はその鶏を失う事なのです。
民主党は、バラマキとの批判を避けるために、子供手当てなどの財源として無駄な歳出をカットすると公約していますから、彼らが公約どおりに無駄の排除に励むとすれば、鶏を殺してしまうかもしれません。バブル崩壊後、自民党政権は何度も財政再建を焦りすぎて景気回復という鶏を殺してきました。今回も同じことが起きかねないのです。しかし、幸いなことに財源に関する民主党の公約は守られそうにありません。無駄が排除されるまでには時間がかかるでしょうから、しばらくは鶏は延命しそうです。

もちろん、景気が回復した後もバラマキが続くようであれば問題ですが、その頃には無駄の排除も進みはじめるでしょうから、民主党の政策が「全体として見れば結果オーライ」となる可能性もあるでしょう。不況期にはバラマキが先行して景気を回復させ、景気回復後は無駄を排除してバラマキ分の財源を確保する、というわけです。
弱者保護政策up
 

民主党は、介護賃金アップを掲げています。これは、それなりの効果があるでしょう。労働力が不足している分野に於ける労働力価格の引き上げは、雇用を増やし、労働力不足を解消する一石二鳥の効果があるでしょう。介護保険の収支は悪化するかもしれませんが、失業手当が減る事を考えれば、財政部門全体での問題はそれほど大きくないでしょう。
しかし、弱者を保護しようという政策が結果として実際に弱者の保護につながるか否かは、一概には言えません。たとえば最低賃金の引き上げは、一見すると弱者に優しい政策に見えますし、低所得者の所得が増加すれば消費の増加を通じて景気も回復するかもしれません。しかし、最低賃金の引き上げが零細企業の倒産を増加させれば、結果として弱者に厳しい事態を招くかもしれません。労働力が余っている市場での労働力価格の引き上げは、容易ではないのです。
また、たとえば製造現場の派遣労働を禁止することは、現在製造現場で働いている派遣労働者を正社員にする効果を狙ったものでしょうが、結果としては彼等が解雇される契機となってしまうかもしれません。
こうして考えると、政策が必ずしも意図した結果をもたらすとは限らず、差し引きすれば大したインパクトを持たないようにも思われます。

官僚支配についてup
 

官僚による支配を打破し、政治が主導権を握る、という理想自体は是とされるとしても、実現可能性となると不安なものがあります。官僚機構が抵抗するから、という事もありますが、それ以前に今の日本の政党に政策を立案し、遂行していく能力があるでしょうか。単なる既得権の塊で排除すべきものと真に必要なものを適切に見分ける能力があるでしょうか。
民主党としては、民主党の政策を支持する優秀な官僚を引き抜いて、民主党のシンクタンクを作るという選択肢があるでしょう。それが出来れば、「現実的な政策を遂行しながら官僚の既得権を排除する」、等々の目的は比較的容易に達せられるかもしれません。そうなれば、自民党もシンクタンクを作って官僚を引き抜くでしょうから、米国に近い姿で政治と行政の分離が行なえるかもしれません。

しかし、問題は官僚が簡単に引き抜かれるか否かです。官僚の中には不偏不党で国益のために身を粉にして働いている人もいるでしょう。そうした官僚は、一党一派に組する事を潔しとしないかもしれません。一方で、私利私欲のために働いている官僚もいるでしょう。そうした人々は、4年後には政権を失うかもしれない政党に一生を捧げるリスクを採らないかもしれません。そうだとすると、結局民主党のシンクタンクには実務経験の無い研究者ばかりが揃い、「理論的には正しいけれども実行に困難が伴う政策」ばかりが提案され、現場が混乱するという事態は当分の間続くことになるかもしれません。
洪水の功罪up
  何十年も大河が平和に流れ続けると、川底にはヘドロなどが堆積します。時折大洪水が起きると、それが一掃されて川がきれいになります。同様に、何十年も政治が安定していると、各所に既得権者が増殖して経済の邪魔となります。時折政治が変わると、既得権者が押し流されて、経済の流れがスムーズになるかもしれません。国民が小泉改革に求めたものも、今次政権交代に求めたものも、そうした効果だったのでしょう。
しかし、洪水は同時に魚の隠れ場所や産卵場所も押し流してしまい、魚が住めない川にしてしまう可能性もあります。同様に、政治の変化は、経済システムの円滑化に不可欠なシステムなども押し流してしまうかもしれません。
小泉改革は、確かに既得権者を押し流しましたが、新しく台頭したのは拝金主義者であり、それが淘汰された後には何も残りませんでした。もしも小泉政権が10年続いたならば、従来とは異なる新しい枠組みが出来、それが機能するようになったのかもしれませんが、そうはなりませんでした。
民主党が官僚機構という既得権を押し流すとすれば、その後に何が残るのでしょうか。年金記録問題などを見ると、官僚制度が問題を抱えている事は理解できます。したがって、仮に民主党政権が10年続くとすれば、官僚機構に代わる新しいシステムが構築され、それが機能するようになるのかもしれません。これが、今次選挙で有権者が望ましいと考えたシナリオなのでしょう。
しかし、短期的に見れば、現在の日本で官僚機構を利用せずに政策を立案し、運営していく事は大変難しい事です。官僚機構の協力なしには、民主党議員が徹夜をしても予算案を作る事は不可能でしょう。まずは、来年度予算を誰がどのように策定し、どのように遂行していくのか、という事が心配されます。最悪なのは、新しいシステムが構築される前に事態が混乱し、民主党政権が短命に終わり、後に何も残らないという事態です。
ハイリスク・ハイリターンup
  「自民党と民主党の主張は何れが優れているか」「政権交代が起きる国と起きない国は何れが望ましいか」といった質問に答える事は容易ではありませんし、当サイトの目的でもありません。しかし、確かなことは、国民が政権交代というハイリスク・ハイリターンな選択をしたということです。
景気予測を本旨とする当サイトとしては、選挙の結果を受けて、長期的に新しいシステムが機能するか否かという観点よりも、短期的な混乱がどの程度になるのか、という観点を重視していく事になると思います。
その意味では、「純粋経済面だけを見れば景気に強気を維持するが、政治面からの混乱が景気を下押しするリスクに要注意」といったスタンスを取っていく事になりそうです。
今回は以上です。
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