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景気の見方読み方
Sep.08

2008.9.1

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「景気対策を考える」

はじめに> <サブプライム問題と日本の景気> <一次産品価格の高騰と日本の景気
国内の景気対策> <原油の値下げ


はじめに
 

景気が後退しているようです。景気は健康と似ていて、問題ない時には誰も関心を示しませんが、問題が生じると人々の関心が高まります。その意味では、暫くぶりに景気の予想屋が関心を持ってもらえる時期が来たのかもしれません。今回は、景気の見通しと景気対策について考えてみましょう。

サブプライム問題と日本の景気up

 

昨年夏以降、サブプライム問題という言葉が急に注目され、これが日本の景気の下押し要因であるとされてきました。しかし、そうではなかったようです。
サブプライム問題というのは、「米銀が貸し出した住宅ローンが焦げ付いて、それを証券化した商品を持っている投資家が損をした」ということです。焦げ付いた住宅ローンよりも証券化商品の値下がりの方が大きかったこと、それによる世界の株式時価総額の減少幅が更に大きかったこと、といったオマケがつきましたが、いずれにしても金融の世界の話であって、景気の話ではありません。日本の投資家も、サブプライム関連商品を持っていて損をしたり、持っている株が安くなって損をしたりしましたが、それによって景気が悪くなるという心配はあまりないでしょう。米国では庶民が株式を所有しているため、株価の値下がりによって彼等が財布の紐を締める可能性もありますが、日本では庶民があまり株を持っていないので、そうした効果は小さいからです。

景気に関係するのは、サブプライム・ローンが焦げ付いたことではなく、焦げ付いた理由である「米国住宅バブルの崩壊」です。米国で住宅バブルが発生し、住宅が建ちすぎたので、新たに住宅を建てようという人が減り、米国の大工が失業した、というわけです。そうであれば、米国の大工が失業して米国の景気が悪くなり、廻りまわって日本の景気が影響を受けるかもしれない(失業した大工が買うはずだった日本製品を買わなくなった)、といった程度の話です。ITバブルが崩壊した時には、米国人がパソコンを買わなくなったため、パソコンを輸出している日本の企業が直接の影響を受けましたが、今回はそれとは事情が違うというわけです
一次産品価格の高騰と日本の景気up
 

一方で、一次産品価格の高騰は、日本にとってストレートな打撃です。何年前と比較するか、等の問題はありますが、今年度の日本の一次産品の輸入額は、価格高騰によって十数兆円も増加している計算になります。これは、アラブの王様等々が5%の消費税を課したほどの経済的なインパクトがある出来事です。企業がこれを消費者に転嫁すれば個人消費が落ち込みますし、転嫁しなければ企業収益が落ち込みます。
消費税を5%も引き上げたら、よほどの景気対策を採らない限り、景気は悪化するでしょう。そう考えると、日本の景気は驚くほど堪えている、ということではないでしょうか。本来であれば、今頃は深刻な不況に陥っているはずなのであって、「現在の景気は既に後退しているのか否か」、などといった議論をしているのが不思議なくらいです。
なぜ、これほどのインパクトを受けているのに日本の景気はこれしか悪くなっていないのでしょうか。一つには、原材料価格の高騰が小売価格に転嫁されていないからでしょう。原材料価格が100円値上がったとして、企業がこれを小売価格に転嫁すれば、消費はその分だけ減少します(金額は一定で購入量が減少するという意味です)。所得が限られている中で、小売価格が上がれば、消費者はその分だけ生活を切り詰める必要があるからです。一方で、転嫁しなければ企業収益が100円悪化しますが、それによって設備投資が100円減少するとは限りません。したがって、原材料価格の高騰分を企業が転嫁しなければ景気への悪影響は軽微に止まるというわけです。
例外として、ガソリンだけは、小売価格にストレートに転嫁されていて、ガソリンの買い控えが生じていますが、これによって産油国の所得が抑えられていることはあっても、日本の景気が悪影響を受けているということではありません。むしろ、日本人がガソリンを買わなくなって、浮いた費用を国産品の購入に回せば、景気の落ち込みを緩和してくれるかもしれません。ガソリンは小売価格に占める輸入品の割合が高いから企業が転嫁せざるを得なくなり、その結果買い控えが起きるということだとすると、価格メカニズムが景気への悪影響を緩和してくれているということなのかもしれません。
余談になりますが、今次景気拡大が緩やかなものに止まったのは、企業が利益を溜め込んで賃上げに応じなかったからです。100円賃上げすれば消費が100円近く増えたのでしょうが、企業が溜め込んでいた100円がそっくり設備投資に使われるということはなかったのです。その意味では、今度は逆の動きが出ているということかもしれません。企業はコストが上がっても、給料を下げたり製品を値上げしたりせず、今まで溜め込んできた利益を吐き出しているだけだというわけです。
日本の景気がそれほど悪化していない今一つの理由として、輸出が比較的好調だということが挙げられます。中国などの経済が好調を持続していること、円相場がユーロなどとの関係で、円安の水準にあること、などが寄与しているのでしょう。(4−6月期の外需は落ち込んでいますが、それ以前の好調と均して考えれば、懸念するほどのことではないと思われます。経済統計は振れますので、一喜一憂する必要はないでしょう)。

「山低ければ谷浅し」という面もあるかもしれません。通常の景気後退は、景気過熱に対する引締めの結果として生じます。その場合、設備投資も住宅投資も乗用車の購入も活発に行なわれた後の景気後退となりますから、設備も住宅も乗用車も需要が残っていないわけです。しかし今回は、幸か不幸か昨年までの長期にわたる景気拡大が緩やかなものにとどまっていた結果として、設備や住宅等の需要が先食いされておらず、今後も一定の需要が見込めるというわけです。
国内の景気対策up
 

「一次産品価格が上昇した割には景気の悪化は軽微だ」ということは、景気対策が不要だということではありません。景気が後退しているとすれば、景気対策が必要なことは疑いないでしょう。現状のインパクトが軽微であっても、景気は一度悪化をはじめると、生産減→雇用減→所得減→消費減→生産減、等々の悪循環に陥る可能性があるからです。
問題は、ばら撒きではなく、長期的にも日本経済に資するような対策が望まれるということです。ケインズは、「景気の悪い時には穴を掘れ」と言いましたが、どうせ穴を掘るならば、後日埋めてしまうのではなく、誰かが光ファイバーでも通したくなるような穴を掘る方が良いに決まっています。
その意味では、一次産品価格の高騰が長期化するリスクを考えて、省エネを促進することは一案でしょう。官庁の屋上に太陽光発電設備を置く、公用車を省エネタイプに変更する、といった投資に加え、省エネ投資に補助金を出して民間の省エネを促進する、等々の政策が求められます。個人に対しても、燃費の良い自動車は税金を免除する、住居の断熱工事に補助金を出す、等々の策を検討すべきでしょう。
一方で、コスト増で困っている業者に対して赤字を補填するための補助金を出す、といった対策は採るべきでありません。声が大きい人だけ補助金がもらえるという結果が容易に予測されるからです。赤字か否かを問わず、コスト増で困っているのは皆同じですから、困っている人全員に補助金を出すのでは財政がもたないでしょうし、省エネも進まないでしょう。
もっとも、政治的にどうしても対策が必要だという場合もあるでしょう。その場合には、赤字補填の補助金を出すのではなく、赤字業者の廃業を促し、そのための支援金を大盤振舞いする、ということが検討されるべきでしょう。たとえば漁船の燃料代が高騰して漁師が苦しいという場合、燃費の悪い漁船を政府が高値で買い取って廃船にするとすれば、政治的な要請は満たされ、省エネが進み、何よりも魚の需給が引き締まって、残った漁船の採算が改善するという効果が見込まれます。

それにより物価が上がるとしても、それは仕方のないことですから、インフレだと言って押さえ込もうとしてはいけません。これは、魚価がコストに見合った水準まで上昇するということですから、広い意味で言えばコスト増の転嫁です。コスト増の転嫁であれば、一次産品価格の上昇が止まれば物価上昇も止まるわけですから、さほど懸念するべきではないでしょう。便乗値上げが横行したり、賃金と物価のスパイラルが進行したりすれば別ですが、そうした状況は現状では見込みにくいでしょう。
原油の値下げup
 

もっとも、一次産品価格高騰という原因を元から断たなければ、苦しい財政事情を抱えて本格的な対策は望み薄でしょう。その意味でも、最も望ましい景気対策が、一次産品価格を下落させることであることは疑いありません。そのために、先進国政府が採り得る手段は少なくありません。いずれも非常識に聞こえますが、よく考えると、絶対に無理だというわけでもないようです。
第一は、先進国が一斉に原油輸入税を課することです。それにより原油需要が落ちて原油価格が下落すれば、消費者の払う金額はそれほど変化せずに、アラブの王様の取り分が減って先進国政府の取り分が増えるという効果が期待できるでしょう。先進国政府が、増収分を減税に用いるか否かは各国が決めればよいでしょう。
第二は、先進国政府が原油先物市場に売り介入をすることです。為替市場に介入することがあるのですから、原油先物市場に介入して悪いはずはありません。為替介入は、その国の経済に与える影響が複雑で、賛否両論があり得ますが、原油価格が低下することは、先進国経済にとって疑いなくプラスですから、協調介入は有益でしょう。
第三は、米国が単独で利上げをすることです。米国の利上げ→ドル高→原油安、利上げ→金余り現象の反転→投機資金縮小→原油安、といった効果が見込まれるため、米国自身にとっても利上げが景気を悪化させる要因にはならないでしょう。
こうした対策に米国が乗ってくるかどうかは疑問です。第一に、市場メカニズム信奉の強い米国では原油価格を操作することに消極的でしょうし、第二にメジャーと呼ばれる大手石油会社が米国の政治に対して大きな発言力を持っていることが、原油価格抑制的な政策を採り難くさせているのでしょう。もっとも、政治は水物です。ガソリン価格高騰に怒った米国民が、原油価格を下落させる政策を強く支持するようになれば、米国政府も乗らざるを得ないかもしれません。期待したいものです。

 

今回は以上です。

 
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