もちろん、そこそこの規模のバブルが崩壊したわけですから、景気への影響は避けられません。第一は、バブル期の反動であり、第二は、不良債権処理の影響です。
第一に、住宅投資や消費が「実力」以上に行なわれた分だけ、バブル崩壊後には「実力」以下に落ちることは当然でしょう。住宅投資や消費の「実力」が100だとして、バブル期が101であれば、崩壊後は99となり、後に100に戻ります。この際、バブル期に1%押し上げられた増加率が、バブル崩壊後に2%押し下げられるので、バブル崩壊の影響は比較的大きく感じられる場合があります。バブルが5年間続いたあとで崩壊すれば、崩壊後に95となり、増加率が6%押し下げられる可能性もあるでしょう。
ここで問題なのは、「事態の悪化が予想を超えたものだ」という印象を持つ人が多いことです。株式市場も、「予想以上に事態は悪化している」として何度も急落しています。そのメカニズムとして、まず、人間の想像力は乏しいもので、どうしても予測が現状に引きずられるという面があります。したがって、住宅投資が落ちることは予想しても、「せいぜい101が100になる程度だろう」と考える人が多いはずです。それが99になり、95になる過程で、予想以上の悪化と感じられるというわけです。
中には、悪化を予想していない人もいるでしょう。「米国の住宅需要は伸びる」と信じてきた人々は、「実力」が100から101に変化したのだと考えているでしょうから、101から100に落ちただけでも驚き、101に戻る筈だと考えるでしょうし、実際には更に落ちていくわけですから、理解不可能なことが起きているように感じるかもしれないでしょう。
第二に、不良債権の処理が景気の悪化を加速する可能性があります。不良債権処理で担保の住宅が一斉に売りに出され、住宅価格が下落することが、住宅投資と消費の両面から実体経済に悪影響を与えることになりかねません。住宅価格が下がれば、住宅を新築せずに中古を買う人が増えたり、更には値下がり期待で買い控える人が出てきたりするでしょう。住宅を担保に借金をして消費に充てる人が米国には大勢いますが、そうした消費が困難になることも、景気を下押しするでしょう。「銀行が不良債権を処理したことで自己資本不足に陥って貸し渋りを行なう」といった可能性もあります。一行だけが不良債権を処理すれば、それほどの損失にならない場合であっても、全行が一斉に処理すると、担保不動産の競売が殺到して買い手がつかず、銀行の回収額が思いのほか減少する可能性もあるからです。
銀行が不良債権を時間をかけて処理していけば、こうした悪影響は緩和出来るのですが、@米銀は邦銀に比べて「不良債権を迅速に処理すべきだ」と考える傾向が強いこと、A住宅ローンが証券化されているので権利者が複数存在していて貸出条件の変更などが行ないにくいこと、などが影響して焦げ付いた住宅ローンが競売に結びつきやすいようです。
しかし、これも深刻度は中程度でしょう。バブルの規模が中程度でしたから、その反動も中程度にとどまるでしょうし、サブプライム・ローンの担保物件が全米の住宅に占める比率はさほど高くありませんから、競売が相次いでも価格の下落はそれほど激しいものとはならないでしょう。「米国人が消費好きであるために潜在的な需要が強く、少し金利を下げれば景気が底支え出来る」、という面が日本よりもはるかに強いことにも留意が必要です。「倹約家の国民がデフレ下で貯蓄に励み、金利ゼロでも借入需要が伸びなかった」という日本とは状況が異なると考えてよいでしょう。 |