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景気の見方読み方
Jan.08

2008.1.1

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「今年の景気も好調持続」

はじめに> <景気は勝手に止まらない> <金融面のパスを通じた影響は限定的
米国景気減速の影響も限定的か> <内需の底割れは考え難い> <基本は強気


はじめに
 

あけましておめでとうございます。今回は年初ですので、今年の景気の見通しを書いてみました。これまで景気の話は書くことが少なく、書いても読んでいただけない日々が続いてきましたが、ここにきて景気の先行きが怪しくなってきましたので、景気の話を読んでくださる方が増えていただければ幸いです。

景気は勝手に止まらないup

 

景気見通しの基本は、景気は勝手に止まらないということです。景気はひとたび拡大をはじめると、消費増→生産増→雇用増→所得増→消費増、生産増→投資増→生産増、景気拡大→企業収益増→企業の設備投資意欲増、銀行の貸出態度積極化→貸出増、設備投資増→景気拡大、といった各種スパイラルが働き、一層拡大していく性質を持っています。
これが止まるのは、インフレ懸念が生じて中央銀行が金融を引締める場合と、海外からの大きなショックが国内景気の方向を転換させる場合ですが、今回は金融引き締めはあり得ませんから、海外からのショックの影響を考えるということになります。

今回は、史上最長の景気拡大が続いているにもかかわらず、景気の力が今一つです。企業が利益を溜め込んで従業員に分配しないため、消費が盛り上がってこないからでしょう。従来であれば、「会社は家族」なので、儲かれば従業員に分配し、会社は借入で設備投資を行ないました。それにより、消費も投資も盛り上がったものですが、「グローバル・スタンダード」信仰の影響で企業行動が変化したことが消費の伸び悩みと銀行貸出の伸び悩みにつながっているのでしょう。
サブプライム問題以前の筆者は、「消費が盛り上がり過ぎない方が景気の過熱が避けられ、インフレ懸念が生じないから景気がかえって長持ちする」とプラスに考えていたのですが、景気の力強さが足りないところに外的ショックが加わると、景気の方向が逆転してしまう可能性が出てきます。一度逆転すると今度は景気悪化のスパイラルが働きますから、この分岐点を乗り切れるか否かが今後の景気を大きく左右するということになるわけです。

金融機関経営や株価といった金融面でのパスと、米国景気減速を通じたパスに分けて、影響を考えて見ましょう。
金融面のパスを通じた影響は限定的up
 

サブプライム・ローン問題で、米国のみならず世界中の大手金融機関が損失を被りました。これは、サブプライム・ローンという住宅ローンが証券化されて転売され、それを世界中の金融機関が購入していたというわけです。もっとも、そのこと自体の景気への影響は限定的でしょう。欧米の金融機関で大きな損失を被ったところは産油国などからの増資を受け入れて経営の不安定化を予防していますし、日本の金融機関に生じた損失は、経営を不安定化させたりBIS規制による貸し渋りをもたらしたりするような規模ではないようです。
サブプライム問題が浮上してから、日本の株価が大きく値下がりしています。日本経済に問題があるからというよりは、国際分散投資を行なっているファンドがサブプライム関係で被った損失を穴埋めするために日本株を売却したといったことで日本株が値下がりしているようです。そうだとすれば、株価下落の景気への影響は外的ショックの一部だといえるでしょう。
もっとも、日本では個人の持ち株比率は余り高くないため、株安が直ちに逆資産効果を通じて消費を抑制するといった影響はそれほど考えなくてよいでしょう。株安が景気の先行きの暗さを暗示することで消費者マインドや企業家マインドが冷やされるといった影響は考える必要があるでしょうが、これも、さほど深刻な影響にはならないでしょう。

米国景気減速の影響も限定的かup
 

米国の景気が減速した時に、日本経済にどの程度の影響があるのか、という問いは、ITバブル崩壊時以降、筆者の重要課題となっています。当時は、米国のITバブル崩壊により、米国よりも日本経済に大きな影響が出ました。「米国が風邪をひいたら日本が肺炎になった」というわけです。
戦後の日本経済は、米国経済の影響を大きく受けました。輸出減が需要減として景気を下押ししたことは当然ですが、ドル不足経済にあって、米国経済減速→輸出減→ドル不足→国際収支の天井による引き締め→景気後退といったパスも重要だったはずです。
その後、日本経済が外貨不足から解放され、経済がサービス化して財の輸出に頼る必要性が減じ、事実バブル期からバブル後不況にかけて米国経済と日本経済は互いに「我が道」を歩んでいました。そんなわけで、ITバブル崩壊時も、筆者は「日本経済は米国経済の影響はあまり受けないだろう」と考えていました。しかし、そうではなかったのです。対米輸出のみならず、アジア向けの輸出も大きな影響を受け、日本経済は米国以上に落ち込むことになったのです。これは、米国経済のサービス化が影響していたものと思われます。
通常の場合、需要が落ちた時には、サービスよりも財の需要の方が大きく落ち込みます。したがって、米国の需要が落ちても米国内ではサービスの生産はあまり減らず、したがってGDPも大きくは落ち込みませんが、外国のGDPは大きく落ち込むことになります。日本はアジア諸国に部品や設備機械などを輸出していますから、アジア諸国の対米輸出が落ち込むと、アジア向けの輸出も大きく落ち込み、GDPは大幅に下押しされることになるのです。ITバブルの際に日本経済が大きな痛手を被った一因は、こうしたメカニズムでした。

では、今回はどうでしょうか。今回も、理屈的にはそうしたメカニズムが働くと思われますが、前回ほどの影響は受けないのではないかと考えています。第一の理由は、米国の景気減速の主因が住宅投資の落込みであり、これは正に米国内の需要の減少だからです。もちろん、建設労働者の失業や住宅価格の下落によるホーム・エクイティ・ローンの減少などで、米国の個人消費にも影響が出るでしょうし、その影響は輸入減を通じて日本にも及ぶでしょう。しかし、ITバブルの時のような直接的な影響ではないでしょう。
第二の理由は、新興国や産油国などの経済が、米国経済とはある程度独立して好調を維持する可能性が高いことです。たとえば中国では投資の過熱を政府が抑制しているわけで、輸出の減少が景気を冷やしかねない事態に陥れば、投資抑制策を緩めれば景気は維持できるでしょう。産油国などの発展に向けた投資プロジェクトは、米国経済が減速しても無関係に続けられるでしょう。新興国や産油国の需要は、日本製品にも及ぶはずです。
第三の理由は、ユーロや韓国ウォンに対する円安です。日本のユーロ圏や韓国に対する輸出がそれほど多いわけではありませんが、「値段は高くても品質が良いものが欲しい」という需要を巡って世界の市場で日本製品と競合しているのは欧州製品と韓国製品ですから、そうした需要に関して言えば、「日本の対中国輸出を考える際には、人民元と円の関係よりもユーロと円の関係の方が重要である」という面もあるわけです。

もちろん、楽観は禁物です。最大のリスクは、米国経済が失速することです。住宅価格が上昇し、住宅投資が盛り上がっていた部分が剥落し、逆に反動減で住宅投資が凍りつき、住宅価格も大幅に下落することになれば、影響は相当大きなものになるかもしれません。バブル後の日本経済で、過剰投資の反動で投資が止まり、景気が急激に悪化したことが思い出されるような状況です。

しかし、住宅関係が悪化しても、それが米国全体の景気を後退させる可能性はそれほど大きくないかもしれません。米国は日本と異なり、潜在的な需要は十分にあるため、金利さえ下げれば需要はいくらでも顕在化させることが出来るからです。インフレ懸念がくすぶる中で思い切った利下げが行なわれるか否かが焦点となりますが、住宅価格が大幅に下落すれば消費者物価指数に大きなウエイトを占める帰属家賃が下落するでしょうし、米国の景気減速で原油消費量が減れば、原油価格も落ち着くでしょう。WTIは世界の原油価格の基本となっていますが、所詮は米国の原油であり、米国の原油在庫の増減に顕著に反応するというわけです。
内需の底割れは考え難いup
 

日本経済を見ると、内需も力強いとは言い難いものがあります。しかし、企業の設備投資意欲は引き続き強いですし、住宅などは建築確認手続き厳格化の影響で一時的に落ち込んでいますが、その部分は暫らくすれば元に戻るでしょう。水準が戻れば今年が落ち込んでいることとの対比で来年度の成長率にはプラスに寄与するでしょう。

消費は所得の伸び悩みから鈍い動きとなっていますが、団塊の世代が退職金を手にすること、労働力需給の引き締まりが徐々にではあっても賃金水準の上昇をもたらすと期待されること、少なくとも雇用不安が無い分だけ消費者マインドは明るいはずであること、等を考えれば、消費が底割れする可能性は小さいでしょう。原油高などを映じてガソリンなどが値上がりしていますが、一方で家電製品などは順調に値下がっているため、トータルで見れば物価の上昇で消費者の支出が抑制されるということも考え難いでしょう。
基本は強気up
 

景気見通しというのは、ある程度の理屈はありますが、最後は「長年の経験と勘」に頼るしかない場合が少なくありません。今のような局面では、景気にプラスの要因とマイナスの要因が綱引きをしているようなものですから、自信を持って理路整然と景気の見通しを述べることが出来る人は少ないでしょう。
筆者は、景気の先行きに比較的強気です。根拠といえば、「景気には、一度拡大をはじめると、そのまま拡大を続ける力が内在している」一方で、「サブプライム問題に端を発した騒動が日本の景気に与える影響はさほど大きくなさそうだ」ということです。しかし、もとの景気拡大が力強いものではないだけに、小さなショックでも景気が方向転換をしてしまう可能性は否定は出来ません。病弱な老人が寒風によって風邪をひくのか否かは、運の要素も多分にあり、長年の経験と勘で予想するしかない、といったところでしょうか。

今後の動きを注意深く見ていくことが必要な局面が、久しぶりに訪れたということのようです。
あとがきup
 

ここ2〜3年、「景気は好調持続」というコンセンサスが出来上がっていたために、景気論議が盛り上がらず、景気の話を書いても読んでもらえない日々が続いていましたが、ようやく景気の話を読んでくださる方が増えてきたようです。景気の予想屋は医者と同じで、何か問題が起きた時だけ思い出してもらえるということでしょう。喜んでよいのか、複雑な心境です。

更に問題なのは、強気の見通しを書くと、「当たれば人々が景気に興味を失って、拙稿を読んでもらえなくなる」一方で、「外れれば読者の信頼を失って拙稿を読んでもらえなくなる」という状況に陥るということです。それでも強気の見通しを書くのは何故なのか、つくづく予想屋というものが可哀想に思えてきますね。同情していただければ幸いです。
 

今回は以上です。なお、本稿は情報提供のみを目的としたものであり、読者に投資などを御勧めするものではありません。念のため。

 
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