| 景気の拡大は、財政赤字を縮小させます。税収が増える一方で、景気対策の公共投資などが不要になるからです。今次景気回復も例外ではありません。小泉政権下で36兆円にまで膨らんだ財政赤字は、19年度予算によれば25兆円にまで縮小します。
財政赤字というのは、一般的な赤字とは異なり、過去の債務の返済分も含みますから、国の借金が25兆円増えるわけではありません。国の長期債務は7兆円しか増えず、その間に名目GDPが増加するため、長期債務の名目GDP比は、前年度よりも低下することになっています。同様に、公債残高の名目GDP比も低下することになっています。
今次回復が財政赤字縮小に寄与している一因は、物価が安定しているために低金利政策が続いていることです。通常は、景気が回復すると金利が上昇し、我が国のように政府の債務残高が大きい場合には、政府の利払い負担が増加して、財政再建の速度を抑制しかねないのですが、今回はそうなっていないからです。低金利が円安を通じて一層の景気拡大や企業収益の増加をもたらしていることも重要でしょう。
今一つの要因は、企業が収益を貯め込んでいることです。従来は、企業は役職員の共同体であり、儲かれば社員にも幅広く分配されていたのが、ここにきて企業が役職員への配分を渋るようになって来ています。このことが、個人消費の伸び悩みをもたらしているわけですが、それが景気の過熱を防いで景気を長持ちさせ、低金利を持続させる要因ともなっているわけです。財政に密接に関係するのは、法人税率がサラリーマンの所得税率よりも高いため、企業収益増は法人税収を大幅に増加させるということです。加えて、企業収益増は株価を上昇させ、有価証券取引税などにも貢献するでしょう。
昨今のポリシーミックスも望ましい動きをしています。日銀はゼロ金利解除時の失敗により、利上げに慎重にならざるを得ず、金融政策は緩和気味に運営されています。一方で、財政政策の方は、定率減税の廃止をはじめとして、緩やかに緊縮財政策が採られています。こうした組み合わせが、景気を過熱も失速もさせずに長持ちさせていると同時に、財政赤字を減らしているというわけです。 |