ここで、頭の体操をしてみましょう。やや極論ですが、発想の転換をすると、今の円相場は「ファンダメンタルズ」に合っていると言えるのかもしれません。日本は国民が「よく働いて倹約する」からモノが余る国、米国は国民が消費好きなのでモノが足りない国だとしましょう。日本から余ったモノを輸出して、その代金を「ツケ」にしておくということは、両国にとって望ましいことです。そうした望ましい姿が実現している状況を「ファンダメンタルズ」だと考えれば、現状こそファンダメンタルズだと言えるでしょう。
ファンダメンタルズであると言うためには、そこから外れた場合に戻ってくるメカニズムが必要なわけですが、そのメカニズムは両国の金融政策にあると考えられます。モノ余りの日本は金融緩和、モノ不足の米国は金融引き締めをします。すると、日米金利差から日本人の外貨建て投資が増加し、円安が日本から米国へのモノの流れを促すというわけです。そうだとすると、「今の姿が正常であり、経常収支が均衡する為替レートなど成立するはずが無いし、成立しなくて良いのだ」ということになるでしょう。本当にそうならば、日本にとって大変都合がよいのですが、如何なものでしょうか。
さて、為替レートを予測することはほとんど不可能ですから、実際には近い将来に急激に円高が進むかもしれません。たとえば何らかのきっかけで円キャリー取引が巻き戻されて円高となり、個人投資家が「10年以上忘れていたが、やはり外貨資産は為替リスクがあって怖いものなのだ。もうやめよう」と考えるようになるかもしれません。海外に向かっている大量の個人マネーが一斉に国内回帰すれば、急激な円高になるでしょう。では、仮にそうなった場合、「円安バブルが崩壊した」ということになるのでしょうか。バブルという言葉をどう定義するかということでしょうが、「美人投票」の世界では市場の思惑で為替が動くことは通常のことであり、その幅が大きくなったからといって「バブル」と呼ぶことは適当ではないでしょう。逆に、これをバブルと呼ぶならば、為替市場には毎日のように「小さなバブル」が発生していることになってしまうからです。
最後に、今回は触れませんでしたが、経済学的に円安のバブルをどう考えるかは、難しい問題です。御興味のある方は拙稿「株安、円安のバブルは成立し得るか(http://www.tsukasaki.net/report/report0507.html)」を御笑覧いただければ幸いです。 |