不しかし、過度の悲観は必要ないと思います。前回との相違点もいくつか見られるからです。
前回は、輸出の減少だけではなく、日本でも多かれ少なかれITブーム(バブルとまでは言えないかもしれませんが)の崩壊があり、これが景気を下押ししたという面もありましたが、今回はそうしたことはなさそうです。
米国の景気が減速から後退に向かえば、原油価格が落ち着いてくる可能性もあります。米国は何といっても石油ガブ飲み経済ですから、米国の景気が後退すれば、世界の原油需給に与える影響は大きなものがあるからです。
前回に比べて、日本経済にとって中国経済の占める位置が大きくなり、しかも中国が自律的な成長を遂げられる段階にまで来たという点も重要でしょう。中国では投資需要が活発で、経済の過熱を押さえ込んでいる状況ですから、輸出が減速すれば抑制をやめることで成長を持続させることが出来ることになります。
為替レートが比較的円安気味で推移していることも明るい材料です。実質実効為替レート(輸出しにくさ指数)で見た現在の円相場は、過去と比べると相当円安の水準にあり、今後も日本の超低金利が続いて米国が引き締め気味の運営をするとすれば、急激な円高に進む可能性は大きくないでしょう。そうであれば、需要要因による輸出の減少を、価格要因がある程度補ってくれるかもしれません。
日本国内に目を移せば、不良債権問題には概ね決着がつき、金融システムは前回と比べて格段に安定しています。また、国民の日本経済に対する極端な悲観論は影を潜め、経済の先行きに対するコンフィデンスが前回よりも格段に改善しています。景気は気からということを考えると、これも大きな相違だと言えるでしょう。
それより何より、今回は景気自体に勢いがあります。景気が回復あるいは拡大している時に外的なショックを受けると、景気が方向転換して不況に陥ることがありますが、その可能性は景気の足腰が弱いほど大きくなります。寒風にあたって風邪をひく確率が、健康人は低いが病み上がりの人は高いというのと同様です。その意味でも、今回は日本経済が充分な健康体ですから、ある程度のショックが来ても耐えられる可能性は高いと思われます。
こうしたことを考えると、原油価格が更に高騰を続けて米国がスタグフレーション(不況とインフレの共存)にでも陥らない限り、日本経済の息の長い拡大は持続する可能性が高いのではないでしょうか。
なお、前回のゼロ金利解除の時に、「日銀は誤った利上げによって景気の腰を折った」といった批判が聞かれましたが、そんなはずはありません。金利が0.25%上がったくらいで景気の方向が変わるほど経済は金利に敏感ではありません。その証拠に、過去の金融緩和や引き締めが一度で終わったことなどないわけです。前回の日銀の決定が誤りであったとしても、せいぜい「病み上がりの患者が寒風にあたって風邪をひいた時に、病室の暖房の温度を1度下げた」といった程度のことでしょう。同様に、今回の利上げが景気の方向を左右することはあり得ません。その意味でも、今回の景気の先行きを過度に悲観する必要はないと言えるでしょう。 |