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景気の見方読み方
May.06

2006.5.1

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「いざなぎ超えは10年景気の折り返し点か」

はじめに> <小泉改革の成果か?
今後は改革の恩恵も> <超長期拡大?


はじめに
  経済指標を見る気も起きないほど着実な景気拡大が続いていますから、「今年度の景気を予想する」といったものでは読んでいただけないでしょう。そこで今回は、某誌に寄稿した長期的な景気の見方についての原稿を御紹介します。
小泉改革の成果か?up
  今次景気の拡大期間が、すでにバブル期を超えたという。今後も当面は拡大が続くであろうから、今秋には「いざなぎ景気」を超えて戦後最長となるはずだ。
景気拡大が実感できるようになったのは漸く最近のことであり、高度成長期やバブル期を抜いたと言われても全く実感が涌かないが、理屈からすれば別に不思議なことではない。今次景気が高度成長期やバブル期の景気よりも「偉大だ」と言っているわけではなく、「たまたま景気の拡大を邪魔する外的なショックがなく、政策的に過熱を抑える必要も生じなかったから景気が長持ちした」というだけのことだからだ。
若干理屈っぽくなるが、景気がひとたび拡大をはじめると、そのまま拡大を続ける力が働く。生産増→雇用増→所得増→消費増→生産増といった好循環が続くため、「景気は勝手に止まらない」のである。景気が気まぐれに方向を変えるような印象を持たれているのは、石油ショックやITバブル崩壊といった外的なショックがいたずらをするからであって、景気自体は気まぐれどころか一途である。したがって、外的なショックさえなければ過去の景気の多くはもっと長持ちしていたであろうし、今回は「幸いにも外的なショックがなかったことが景気の長期拡大につながった」と言うことだろう。米国のグリーンスパン前議長の絶妙な金融政策に感謝すると同時に、「米国の過剰消費と中国の過剰生産が微妙なバランスを保ったことで世界的な需要不足にも世界的なインフレにもならずに済んだという偶然」にも感謝すべきであろう。
景気が長持ちした今ひとつの要因は、幸か不幸か景気拡大のテンポが遅いために景気が過熱に至らず、政策的な引締めが行なわれなかったことである。景気の拡大テンポがもっと速かったならば、今頃景気が過熱して日銀の引締めが始まっていたかもしれないからである。
こうして景気が過熱も失速もせずに緩やかな拡大を続けたということも、偶然の所作である面が強い。「痛みに耐えて」と謳った小泉改革が貫徹されたわけでも挫折したわけでもなく、「軟化」して痛みが「和らいだ」ことで、ちょうど景気が緩やかな拡大軌道を辿ることになったからである。
当初の小泉改革構想には、「景気の局面に関心を払わずに純粋経済理論をそのまま政策にしようという危険な試み」という面があった。財政赤字については30兆円に削減するという公約がなされ、「緊縮財政→景気悪化による税収減→財政赤字の拡大」といった逆効果が懸念された。結果としては公約が破棄されて実際の赤字は当初目標を数兆円上回ったため、その分だけ景気刺激策が採られたという計算になろう。不良債権に関しては、「早期に処理させる。借金が返せないような会社は潰れてもらった方が日本経済のためだから」という公約がなされ、「不良債権処理→倒産増加による景気後退→不良債権の増加」といった逆効果が懸念された。結果としては「不振企業は淘汰ではなく再生させる」という方針への転換がはかられたため、景気へのダメージが大きく緩和されることとなった。「痛みを伴う」と宣言した上での外科手術は、「患者の体力不足から逆効果となって患者の生命を奪う」のではないかと心配されていたわけであるが、手術の大幅縮小によって患者は命拾いをしたというわけである。
結果として景気は回復し、今年度予算の財政赤字は30兆円を下回り、不良債権問題も克服された。これを小泉改革の成果だと言う人がいるが、そうではない。改革の軟化によって景気が回復したから税収が増えたり借り手の返済能力が高まったりしたのであり、決して逆ではないのである 。
今後は改革の恩恵も
 

ここまで、今次景気のいざなぎ超えが小泉改革のおかげではなく、むしろ改革が軟化した結果であると記してきたが、本稿は小泉改革自体を批判しているわけではない。むしろ、今後の日本経済については構造改革がプラスに働くだろうと前向きに捉えるものである。
経済が長期的に成長を続けるためには、需要と供給がバランスよく伸びていく必要がある。これまでは供給に対して需要が足りなかったため、需要を如何に増やすかが問題であり、供給面に関心を払う必要は薄かった。そうした中で供給面に過度に偏った小泉改革は、景気回復の逆風と言わざるを得なかったわけである。しかし、需要が着実に拡大してきたことから、こんどは景気が回復を続けるための条件として「景気の過熱がインフレをもたらさない」ことが遠からずクローズアップされてくるであろう。これは即ち「需要の伸びに応じて供給力が順調に伸びていくか」という問題であり、こうした局面に至れば供給面に着目した小泉改革が経済成長に大いに貢献するものと期待されるところである。
官の肥大化、利権や既得権の蓄積といった「よどみ」は、戦後60年の間に少しずつ溜まってきたものであり、これを大掃除しようという試みは、日本経済を効率化・活性化し、供給力を高め、需要の増加に応じた供給体制を維持することに貢献するであろう。

超長期拡大?up
 

では、すでに5年を超えている今次拡大局面が、更に5年続く超ロングラン景気となる可能性はあるのだろうか。今後も外的なショックがないことなど、幸運が続くことを前提として頭の体操をしてみよう。
まず、需要には前述のように増え続ける力が働くので、勝手に需要が腰折れすることは考えにくい。一方で、景気が過熱するほど需要が拡大ペースを速めていくことも考えにくい。景気回復を待っていたかのように増税などが行なわれるであろうし、景気の回復はゼロ金利政策を転換させて円高を招く可能性もある。ポリシーミックスとしては緊縮財政と金融緩和という比較的望ましい姿が続くかもしれない。
供給面では、久々の設備投資ブームや小泉サプライサイド改革を受けた経済効率の高まりなどが潜在成長率を高めるであろう。
労働力不足については、団塊の世代が定年を迎えることなどもあり、懸念がないわけではないが、今後5年間というタームで見れば深刻な問題にはならないだろう。団塊の世代が定年後に再就職をせずに労働市場から一斉に去ってしまうことは考えにくいし、不足が生じれば、労働市場に参加したがっている主婦や若年失業者などもパートなどの形で活用できる。労働集約的な製品については成長著しいアジア諸国からの輸入が増えるであろうから、国際分業によって日本経済が非労働集約型産業への特化を進めていくことも出来るだろう。
こうしてみると、熟練労働者の退職や雇用のミスマッチといった問題はあるものの、ある程度の幸運が重なれば長期にわたる景気の拡大も考えられないわけではなさそうだ。
なお、当然ながら、「過去の景気拡大の平均は○○ヶ月であるから今回もそろそろ景気がピークを打つだろう」などと考える必要はない。景気は外的なショックで腰折れするか、過熱を心配した政府部門が財政金融政策で押さえ込むかしない限り、「勝手には止まらない」からである。

今回は以上です。なお、上記は筆者個人の見解であって、筆者の属する組織などの見解を示すものではありません。また、読者に投資などを勧誘するものでもありません。
 
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