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景気の見方読み方
Feb.06

2006.2.1

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「アジアの通貨制度と日本の国益」

はじめに> <問題意識> <アジア通貨の悩み
通貨バスケットへのペッグ><通貨統合への夢
先進国クラブの提言> <韓国にとってのメリット


はじめに
  アジアの通貨制度について某誌に寄稿しましたので、今回はその内容を御紹介します。若干理屈っぽいかもしれませんが、日本の国益を考えて戦略的に動くという観点から書きましたので、お読みいただければ幸いです。
問題意識up
 

アジア諸国の通貨制度が如何にあるべきかという議論は、通貨危機を契機として幅広く行なわれてきた。欧州におけるユーロの誕生も、アジアでの通貨制度の議論を促してきたと言えるだろう。そして昨年は、中国が事実上の固定相場制を放棄して「管理された変動相場制」を採用したことで、アジアの通貨制度全体にかかる新しい枠組みというものが現実味を増してきた感がある。
筆者としても、アジア諸国の為替相場が相互に安定すること自体は大いに期待する。しかし、一連の過程の中で巧く立ち回らないと、日本として思わぬ不利益を被るとの懸念を禁じえない。下手をするとアジア通貨の中で円だけが孤立し、ひいては域内経済統合の流れの中で日本経済だけが孤立するという事態を招きかねないのである。本稿は、こうした事態を回避するための一方策として、日韓の為替協調を先行させるという提言を行なうものである。

アジア通貨の悩み

 

アジア通貨を船に喩えれば、基軸通貨であるドルが港の岸壁であり、港の入口には円という巨大タンカーが、港内には大小さまざまな貨物船が停泊している状態だと言えよう。岸壁に結びついている船(ドルにペッグしている通貨)も単独で浮いている船(フリーフロートしてる通貨)もあるが、問題は巨大タンカーが外洋の荒波を受けて大幅な浮き沈みを繰り返すため、そのたびに港内の船が大きく揺れたり大波を被ったりすることである。
巨大タンカーを岸壁に結ぶ(円相場をドルにペッグする、すなわち固定相場制に戻る)ことが出来れば問題は解決するのだが、それは不可能である。仮に円が固定相場制に復帰した場合には、日本の投資家が為替リスクなしにドル債投資を行なえるようになるため、米国の高金利を目指して日本の資金が大量に米国に流れることになる。その額は経常収支黒字を大幅に上回るため、政府が外貨準備を取り崩して投資家にドルを売らざるを得ず、瞬時に外貨準備が枯渇して固定相場制が維持できなくなるであろう。
外貨預金やドル債投資を禁止すればよいのであろうが、これだけグローバリゼーションが進展してしまった今となって再び金融鎖国状態に戻るというのは現実的ではない。資金の流れを規制しなくても、日本の金利を米国の金利にあわせればよいのだが、それでは「米国の景気と物価を見ながら米国連銀が米国の金利を操作し、日本銀行は日本の景気と物価を見ずに米国金利に追随する」ことになってしまう。したがって、金融鎖国が出来ず、金利を日本経済の状況に合わせて操作したければ、為替の変動を認めざるを得ないのである。
米国経済は消費好きな国民性から需要超過の傾向があり、日本経済は堅実な国民性から需要不足の傾向があるとすると、経常収支は日本が黒字で米国が赤字になりやすく、金利は米国が日本より高くなりやすい。こうした状況下で資金移動を禁止したり円金利を米国金利に追随させたりすることは弊害が多い。経常収支黒字の額と対外投資の額がおおむね一致することを期待し、両者が大きく異なって為替相場が大幅に変動した時には介入で対応するという現在の対応が現実的であろう。
かくしてタンカーを岸壁に固定することが出来ず、タンカーの浮き沈みが避けられないとすれば、岸壁とタンカーとの間に挟まれた狭い港内に位置する船の悩みは大きい。さまざまな選択肢はあるが、いずれも一長一短であり、理想的な停泊場所は見当たらないのである。
船が単独で浮かんでいれば、波を被ることはないが、大きく揺れることは避けられない。為替相場は思惑で動く部分も多く、小国にとっては先進国からの投資資金のわずかな動きが為替相場を大きく動かすことにもなりかねない。問題は、アジア諸国の経済に占める貿易のウエイトが非常に大きいことであり、為替相場が変動することの影響が非常に大きいことである。大型客船に乗っていると船の揺れが気にならないが小舟に乗っていると舟の揺れが気になるといったイメージであろうか。日本経済でさえも円高や円安の影響で景気が変動し得るが、アジアの諸国の受ける影響は桁違いに大きいのである。
船が岸壁に繋がれていると、タンカーの浮き沈みにより大波を受ける。円相場は95年にピークをつけて以降急激かつ大幅に安くなったが、これによりアジア経済が大きな打撃を受け、それがアジア通貨危機の一因となったとも言われており、将来再び同様の事態が発生しないとも限らない。
では、港に浮かぶ船が相互に鎖で繋がったらどうであろうか。これが出来れば悩みは大幅に軽減するであろう。互いに結びついたところで揺れが収まるわけではないが、単独で浮かんでいる時よりは揺れが小さくなるであろう。さらに重要なことは、船と船の間の関係が安定するため、乗組員同士の意思疎通が楽になることである。アジア諸国は域内の分業が発達しており、域内の貿易が非常に活発に行なわれている。したがって、自国通貨と域内他国通貨との関係が安定することは、経済の安定にとって非常に重要である。
隣国と為替レートを連動させるということは、隣国と金利を揃えるということであり、国内経済から考えると不都合なこともあるであろう。しかし、多くのアジア諸国は貿易依存度が非常に高く、不自然な金利を我慢しても大幅な為替変動を避けるというインセンティブが働くであろうから、政策決定において日本とは異なる優先順位が採られることはむしろ自然であろう。
ここで問題は、港に浮かぶ船が相互に鎖でつながると、どれかの船が沈んだときに他の船が被害を被るということである。たとえばある国で通貨危機が発生し、通貨が暴落すれば、アジア域内の他国の通貨には連動して暴落する力が加わるであろう。これを避けるためには、域内の他国が暴落した通貨を買い支える必要がある。暴落とまで行かなくても、恒常的に貿易赤字で通貨が売り圧力を受けている国があるとすると、他国はそうした国を支え続ける必要があるのである。これは、支える国にとって大きな負担であるし、悪くすると放漫な経済運営を行なっている国がモラルハザード(通貨危機が来ても助けてもらえると考えて態度を改めないこと)に陥る可能性もあろう。
では、港に浮かぶ船がタンカーと鎖で繋がってしまうという選択肢はどうであろうか。これは、欧州諸国が採用したもので、発想としては悪くない。たとえばASEAN+3の通貨の対ドルレートの加重平均を計算し、加重平均と自国通貨がおおむね同じ動きをするように各国が協力すれば、自然と域内通貨相互の関係は安定するであろう。
もっとも、欧州の場合は港に浮かぶ船がそれぞれにタンカー並みに大きかった一方で、アジアにおいてはタンカー1隻がずば抜けて大きいという問題がある。たとえば加重平均のウエイトとして名目GDPを用いると、加重平均の動きは円の動きとほとんど同じになるので、事実上は「ASEAN+中韓の12カ国は円にペッグしろ」ということになってしまう。一方で、ウエイトを均一に近づけていくと、日本が12カ国通貨の動きを見ながら円相場を決めていくということになりかねない。「波間に漂う小舟が大型タンカーを引きずりまわす」ような事態も想定されるのである。これは、日本経済に混乱をもたらすだけではない。投機筋に絶好の機会を与えかねないのである。たとえば、日本円を売り持ちにしている投機筋が、小国の通貨を大量に売る。すると小国の通貨が暴落し、それにあわせて日本政府は円安政策を採る。そこで安くなった円を買い戻せば、投機筋は大もうけができるであろう。
今ひとつ問題なのは、欧州諸国と比べて、アジア諸国は米国との貿易に頼る比率が高いということである。タンカーの浮き沈みに付き合っていると岸壁との関係が極めて不安定になり、それが経済を大きく混乱させることになるのである。対米輸出を成長の源としているアジア諸国が「円高の際に付き合わされるのは嫌だ」と考えるとして、これを説得して鎖を繋いでもらうということは、よほどの外交術を用いないと難しいであろう。

通貨バスケットへのペッグup
 

こうした問題点を解決するために、各船が長い鎖を二本用意して、片方を岸壁に、片方をタンカーに結びつけるという選択肢が考えられる。タンカーが浮き沈みするのに従って、自分もある程度浮き沈みをすることで、タンカーとの関係も岸壁との関係も大きくは変動しないようにするというものである。これは「通貨バスケットにペッグする」と呼ばれる方法で、ある意味では合理的な方法と言えるだろう。
これは、たとえば人民元を「8元=1ドル」と決める代わりに「8元=0.8ドル+24円」と決めるということである。この場合、24円が「0.8ドル+24円」に占めるウエイトは約20%であるから、円の価値(対ドルレート)が10%下落した場合に人民元の価値(対ドルレート)が自動的に2%下落することになる。これは中国にとって好都合である。円が下落すると日本製品と比べた中国製品の競争力が低下するので、中国の輸出が減る。しかし一方で、人民元はドルに対して弱くなるために米国製品と比べた中国製品の競争力は逆に向上し、中国の輸出が増える。両方の効果が相殺し合うことにより、「円相場が動いても中国の輸出総額は変化しない」ということになるからである。
バスケットのウエイトはどのように決めるのであろうか。基本的な考え方は米国との貿易額と日本との貿易額の比率を用いるということであるが、その他の貿易相手国の中に対ドルレートを固定しているところがあれば、その国との貿易額は米国との貿易額に加えるといった調整が必要である。投資についても考慮する必要があるかもしれない。日本企業からの投資が多い国は、円のウエイトを高めて自国通貨と円との関係を安定させるといった配慮が求められるであろう。今ひとつ、競合関係も考慮する必要があろう。たとえば韓国は、自国製品が世界中で日本製品と競合しているため、自国通貨と円との関係が変動すると経済に大きな影響が出る。したがって、バスケットに占める日本円のウエイトは、貿易相手国としての日本のウエイトよりも高く設定することが必要であろう。
実務上は、円の対ドル相場が動くたびにアジア各国政府が自国通貨の対ドル相場と対円相場を微調整しなければならないという手間がかかり、アジアの企業にとっても為替リスクの管理が面倒になるという面はあるが、それで経済が安定するのであれば、その程度のコストは厭うべきではあるまい。もっとも、バスケットにユーロを入れるか否か、近隣諸国の通貨を入れるか否か、といったことを検討する際にはこうしたコストも考慮する必要があるかもしれない。バスケットに入れる通貨を増やすことによる手間の増え方と比較して、追加的な便益がそれほど大きくない場合も多いからである。
アジア諸国の通貨がバスケットにペッグすることは、日本にとっても好都合な面がある。上記の例で言えば、円の対ドルレートが10%変動した時に、従来であれば円の対人民元レートも10%変動していたのが、8%の変動で済むことになるからである。また、円の国際化も進むかもしれない。上記の例で言えば、中国の外貨準備の20%が円で保有されることになるかもしれないし、中国企業も対米輸出入はドル建で、対日輸出入は円建で行なうことによって為替リスクを軽減できるようになるからである。
なお、当然であるが、バスケットへのペッグは万能ではない。円相場が乱高下した場合の影響を緩和する手段としては有益であるが、ペッグである以上、通常の固定相場制と同様、自国通貨の価値が自国通貨の需給を映じないことに伴う問題は起こり得るからである。たとえば成長率が高いことやインフレ率が高いことなどで輸入が増えて貿易収支が赤字になっても、自国通貨が安くなるわけではないので赤字解消のためには成長率を低下させる必要が出てくるかもしれない(戦後日本経済を悩ませた国際収支の天井と同様である)。一方、輸出産業が急激に成長している途上国が巨額の貿易黒字を稼ぐようになっても、それによって為替相場が切上がるわけではないので、黒字が拡大し続ける可能性がある。バスケットペッグを採用している国の通貨は対ドルレートが変動するので「柔軟な為替制度」であるような印象を与えるが、そうではない。したがって、折に触れて微調整を行なっていく必要があるであろう。


通貨統合への夢up
 

欧州でユーロが誕生したことから、アジアでも共通通貨を作れたらという夢が語られるようになっている。経済の発展段階が比較的近い欧州諸国にとっても通貨統合は非常に困難な事業であり、実現には数十年を要していることを考えると、アジアにおいて近々通貨統合が実現するということはあり得ないであろう。しかし一方、アジア地域において経済的な統合が急激に進展していることを考えると、将来の夢として通貨統合というものを掲げておくことは必要であろうし、その実現に向けて一歩ずつ歩んでいくことは有益であろう。問題はその経路である。アジア経済全体の発展という観点ももちろん重要であるが、ここでは日本の国益という観点から考えてみたい。
アジアの経済的な統合に関しては、ASEAN+3(+インド等)という枠組みの中で議論されることが多いため、発展段階が大きく異なる国々が互いの立場を尊重することになり、通貨統合に向けての議論などは「護送船団」になりやすい。すなわち、もっとも発展段階の低い国が参加できるような速度と方法で全員が進んでいくという力学が働くわけである。
それにより、必要以上に時間がかかるという問題は、アジア諸国全体にとってももちろん望ましいことではないが、とりわけ日本にとっては深刻である。時間が経過するとともに日本経済は少子高齢化によって活力が低下していく一方でアジア諸国は目覚しい経済発展を続けていき、アジア経済の中での日本経済の相対的地位が低下していくことは疑いのないところである。日本にとっては時間の経過は影響力と発言力の低下を意味し、日本にとって望ましくない形での通貨統合が実現する可能性が高まるであろう。
今ひとつ大きな問題がある。日本円以外のアジア通貨が同じ動きをするようになると、円だけが仲間はずれになってしまうという可能性である。「第一段階では、アジア各国がそれぞれ独自のバスケットにペッグする。第二段階では各国のバスケットに含まれる通貨の割合を揃える。そうなれば各国通貨が同じ動きをするようになるため、統一通貨への移行が視野にはいってくる。第三段階では、次第にバスケットに占める円のウエイトを高めていき、あるところで円を含めた統一通貨に移行する」という道筋は、一つの選択肢であろう。しかし、この選択肢が採られることは、日本にとっては危険なことである。第二段階で止まってしまい、第三段階に進まないという可能性が否定できないからである。その場合には、円を除くアジア通貨が相互に安定するなかで、円だけが孤立した動きをすることになる。こうした状況で、中国経済が発展を続け、日本経済が少子高齢化に伴って衰退していくとすれば、日本を排除した形で中国を盟主としたASEAN+中韓の経済通貨同盟といったものが形成されていく可能性さえも否定できないのである。
各船がタンカーと岸壁の両方に鎖をつないだとして、タンカーに近い船と岸壁に近い船が鎖の長さを調節して相互に歩み寄れば、当然ながら船員どうしが仲良くなり、岸壁の係員やタンカーの乗組員と付き合うよりも親密につきあうようになるだろう。タンカーの乗組員は、パーティーに参加しても疎外感を味わうことになるかもしれない。そして、船の集団をタンカーに近づけていこうというモメンタムは失われてしまうかもしれない。時が経つにつれて港内の船が立派に改装されていく一方でタンカーが老朽化していくとすれば、極端な場合にはタンカーでのパーティーには誰も参加しなくなるかもしれないのである。


先進国クラブの提言up
 

そうした事態を避けるためには、護送船団方式ではなく、早期に「アジア先進国クラブ」を結成してタンカー上でパーティーを開くことが重要である。手始めに韓国船をタンカーの近くに停泊させるように促し、韓国船員を招いてパーティーを開き、「ほかの人も経済が一定の発展段階に達したら参加してください」ということにすれば、人々は参加資格を得ると同時によろこんでパーティーに参加するであろう。
こうしたアイデアに対しては、日韓の間に横たわる政治的外交的な難問や両国の国民感情が障害となるかもしれない。しかし、両国の経済にとって利益になることならば、両国の通貨が事実上連動するように両国政府が努めるといった協調体制が(明文上か事実上かはともかくとして)組まれる可能性はあろう。したがって、ここでは両国にとっての利害を考えてみよう。
日本にとってのメリットは上記から明らかであろう。アジア諸国が共通の通貨バスケットを採用するという場合には、バスケットは円とドルから構成されるに違いない。(ユーロが含まれるか否かはここでの問題の本質と関係ないので、ここではとりあえずユーロは含まれないことにしておこう)。そうなると、ASEAN+中韓内では通貨価値が相互に安定しているのに、円だけがアジア通貨に対して変動を繰り返すということになる。そうなれば、アジア諸国は日本との貿易よりも大陸内での貿易を選好するようになるであろう。今の経済力を前提に考えれば、日本がアジア内では圧倒的な経済力を誇っているために、アジア諸国からすると円相場が不安定であっても日本と貿易をせざるをえないが、アジア諸国の経済発展が続けば、次第に日本と貿易せざるを得ない必然性は薄らいでいくであろう。
日本を含めたアジア諸国が共通の通貨バスケットを採用するということも理屈の上では考えられるが、これは現実的ではない。この場合にはドルとユーロからなるバスケットということになろうが、円をバスケットにペッグすれば、ドルにペッグした場合と同様に、国内の資金がドル債とユーロ債に大量にシフトして外貨準備が瞬時に枯渇してしまうであろう。
したがって、日本としては、アジア諸国が共通のバスケットを採用するという方向を避け、経済が発展している国に対してはバスケットに占める円のウエイトを高くする(極端な場合には100%にする)ように働きかける必要があるのである。
もっとも、交渉術としては、日本側の事情によって円のウエイトを高めてもらうように御願いしに行くという姿勢をとることは得策ではない。これを避けるためには、相手国にとって円のウエイトを高めることのメリットが大きいことを説得する必要がある。では、たとえば韓国にとって、円のウエイトを高めることのメリットとデメリットはどのように考えればよいのであろうか。

韓国にとってのメリットup
 

韓国と日本の貿易額、投資額などを見る限り、日本との関係が圧倒的に緊密だというわけではない。しかし、上記のように韓国製品が日本製品と世界中で競合していることを考えると、日本円と韓国ウォンの相対関係を安定化させておくことの意義はきわめて大きい。円とウォンとの関係が安定すれば、日本からの投資も増加するであろう。
超長期的に見て円高のトレンドがすでに終焉しており、少子高齢化に伴って円がどちらかといえば安くなっていくであろうと思われることも、ウォンと円との関係を安定させておくことのメリットと言えるであろう。どちらかといえば切り上がっていくであろう人民元とペッグするよりも、どちらかといえば切り下がっていくであろう円とペッグしておいた方が、韓国製品の競争力という点では有利だからである。
円と事実上ペッグすることになると、ウォンの金利を円金利にあわせる必要があるというデメリットは指摘されるだろう。しかし、無理に金利を揃える必要は小さいかもしれない。韓国の方が金利が高いため、金利を揃えなくても、日本からの投資が流入したり日本からの低利資金が利用できるようになるだけで、国内資金が海外に出て行ってしまうわけではないからである。仮に金利を揃える必要が出てきた場合にも、高金利国にあわせるよりはデメリットが小さいかもしれない。低金利により景気が過熱するのを緊縮財政で抑える方が、高金利による不況を拡張財政で補うよりも、財政破綻の懸念がない分だけ長期的な安定性が高いかもしれないからである。
ちなみに、これまでのウォンの対ドルレートの動きを見てみると、円の対ドルレートの動きと似ているように見える。韓国政府が上記のような認識に基づいてウォン相場を操作しているのか否かは定かではないが、少なくともウォンと円が連動することで韓国経済が困っているということではないようだ。
韓国以外にも、マレーシア、タイといったあたりはパーティーに参加するかもしれない。マレーシアとタイが参加すれば、シンガポールも参加するであろう。台湾については、国ではないといった建前の問題があるために議論が難しいが、経済発展段階としては充分に参加資格があることは間違いない。
こうした国(および地域)の通貨が比較的円と近い動きをするようになれば、人民元なども次第に追随するようになってくるかもしれない。
かつて中間管理職であった筆者に独り言を許していただけるとするならば、「職場の新年会に際し、全員の仕事が終わるのを待ってから始めると、若者たちの話題についていけない年寄りが疎外されるといけないので、早めに仕事の終わった年寄りだけで飲み始め、場の雰囲気を作り上げてから若者たちの到着を待つ」というイメージだと言えるのかもしれない。

   
以上。なお、上記は筆者の個人的な見解であって、筆者の属する組織の見解ではない。
 
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