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景気の見方読み方
Dec.05

2005.12.1

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「企業金融入門」

はじめに> <バランスシート> <株式と資本> <負債と資本
株主有限責任> <銀行の立場> <今後もおおむね順調か


はじめに
  景気は自律回復を続けており、最近では景気指標を見る気もしないほど安定しています。予想が当たったのは嬉しいのですが、そのために、ことさら景気について論じる題材がないという状況です。
そこで、今回は講義録を御紹介します。大学1年生の入門講座の一時間目に企業金融の話をした時のものです。厳密性よりもわかりやすさを重視しましたので、御笑覧ください。
バランスシートup
 

皆さんはすでにバランスシートというものを習っていると思いますが、簡単に復習しておくと、企業の状態を他人に説明するための材料の一つです。作り方としては、一つの表の左側に何円分の資産を持っているかを書き、右上にいくらの負債(借金のこと)をしているかを書き、右下に差額を書きます。この差額を資本と呼びます。企業が解散したときには、資産を全部売って現金にして、借金を全部返して残りを株主と言われる人々で山分けするのですが、資本とは、その金額のことです。資本については、いまひとつの考え方もできます。会社を作るときには銀行はお金を貸してくれませんから、自分で出したり知人に出してもらったりします。こうしたお金の合計を資本と呼びます。会社が利益をあげた場合に、これを山分けせずに会社を大きくするために使えば、これも資本にはいります。このあたりのことは、以下の説明を聞いて、理解を深めてもらいたいと思います。

株式と資本
 

私が30万円でパン屋をはじめたとしましょう。バランスシート(単位は万円とします)は資産が30、資本が30です。自分だけの会社なので、儲けも損も自分のものですし、会社を解散するのも自分だけの判断です。
パン屋を大きくするために友人にも資金を20万円出してもらうことにしました。バランスシートは資産が50、資本が50となります。友人に金を出してもらう以上、社長をどうやって決めるか、儲けをどう分配するか、などなどを相談する必要が出てきます。
そこで、株券というものを発行することにしました。5万円出してもらった人に株券という紙を1枚渡します。つまり、私は6枚、友人は4枚株券をもらうわけです。株券は株式と呼ばれることもあります。株券を持っている人は株主と呼ばれ、株券を発行している会社は株式会社と呼ばれます。
株券には、「会社を解散する場合には、持っている資産をすべて売り、負債をすべて返済し、残りを株券を持っている人の間で山分けする。このとき、株券1枚あたりの山分け額が同じになるようにする」「会社を解散しなくても会社の利益を山分けすることは可能であり、その場合にも株券1枚あたりの山分け額が同じになるようにする」「社長を選ぶなどの大事な決定は、株主総会という会議で行う。株主が集まって投票によって決めるのだが、その際には株券1枚あたり1票の投票権を持つ」といったことが書いてあります。
私が6票、友人が4票なので、社長を決めたりする場合には私の意見が通りますが、会社の利益の山分けなどに際しては友人も全体の4割を受け取ることが出来るということになります。
一年目、利益が10万円でました。これを山分けするか会社にとっておく(会社を大きくして将来大きく受け取るため。上品ではないが、「太らせてから食べる戦略」と言えます。)かは、株主総会で決めます。1年目は株主総会の投票で山分けすることが決まりましたので、私が6万円、友人が4万円受け取りました。バランスシートには変化がなく、資産が50、資本が50です。
2年目も利益が10万円でました。今度は株主総会で会社にとっておくにしましたので、バランスシートは資産が60、資本が60になります。
3年目は損が10万円でました。問題は、損が出た場合には資本を減らすしかないということです。利益が出た場合には「山分けする」か「太らせてから食べる」かを選べたのですから、損が出た場合にも「痩せたまま我慢させる」のか「株主が資金を出し合って元の太った姿に戻す」のかを株主総会で決めればよいように思いますが、法律でそれはできないことになっています。それは、私の友人が仕送り前の貧乏学生だとかわいそうだからです。株主総会では私が6票持っていますから、私が「株主が資金を出し合って元の太った姿に戻す」と言えば、そう決まります。そのときに友人が会社から送られてきた請求書を見て、サラ金に借金をせざるを得ないようなことがあっては問題です。ですから、利益の山分けは出来ても損の分担は出来ないという法律があるわけです。したがって、3年目のバランスシートは資産が50、資本が50となります。

負債と資本up
 

4年目には、パン屋をさらに大きくすることにしました。銀行から50万円借金をするか、父親に50万円出資してもらう(株券と引き換えに金を出すことを出資と呼びます)か迷いましたが、銀行から借りることにしました。銀行には、株券を渡すのではなく、借用証書を渡します。これには「会社が儲かっても損しても、借りた金額を必ずお返しします。決められた利子も支払います」と書いてあります。会社が儲かるか損するかによって、株券を持っている人(株主)は受取額が変化しますが、借用証書を持っている銀行の受取額は変化しないというわけです。銀行から借金をした結果、バランスシートは資産が100、負債が50、資本が50となりました。
5年目には、利益が10万円でました。これを山分けすれば、株券1枚あたり1万円になります。私は30万円出して6株持っているので6万円の儲けになります。これは、2割の儲けということです。さて、会社は100万円のパンを仕入れて110万円で売って、1割の利益をあげただけなのに、私は2割の儲けがありました。なぜでしょうか。それは、銀行が会社の利益の山分けに参加していないからです。
ここでは、山分けせずに会社にとっておくことにしましょう。バランスシートは資産が110、負債が50、資本が60となります。将来会社が解散するときには1株当たり6万円が戻ってくることになるので、5万円が6万円に増えて利益率が2割であることにはかわりありません。
仮の話として、銀行から借りずに父親に出資してもらっていたら、どうなっていたでしょうか。10万円の利益を20枚の株券で山分けし、一株あたり5千円の利益にすぎなかったでしょう。利益率は10%です。銀行から借りたのは正解でした。
次の年には、110万円で仕入れたパンのうちで30万円分が売れ残って腐ったとします。バランスシートの資産は80万円になります。負債は減りません。会社が損をしたからといって、銀行は返済額を減らしてくれるわけではないからです。したがって、資本は30になります。会社が解散するときに戻ってくるのは1株あたり3万円しかありません。父親に出資を頼んでおけば、バランスシートは資産が80、資本が80で、会社解散時には1株あたり4万円が戻ってきたはずです。今考えると、銀行から借りたのは失敗だったようです。
このように、銀行から借りる方が得か、誰かに出資を頼むのが得か、ということは、会社が儲かるかどうかにかかっています。儲かる自信があるならば銀行から借りるべきですが、そうでもない場合には誰かに出資を頼んだ方が安心かもしれませんね。

株主有限責任up
 

次の年にはパンがほとんど売れずに50万円分が腐ってしまいました。資産は30万円しか残っていません。銀行からの借金は50万円あるので、資産を全部売っても借金が返せません。どうなるのでしょうか。
一つの考え方は「銀行は会社が損しても借金を減らしてくれたりしません。したがって、資産から負債を引いたマイナス20万円を株主で山分けすることになります。山分けといってもマイナスなので、一株あたり2万円の請求書が会社から送られてくることになります。」というものです。そう考えた人は、今までの説明をよく聞いていた人です。しかし、実際にはそうはならないのです。「株式会社は資産を全部売っても借金が返せない場合には、残りの借金を踏み倒してもよい」という法律があるからです。これを株主有限責任と呼びます。会社がどんなに儲かっても利益は全部株主が山分けしてよいのに、会社が大損をした場合は銀行の借金を踏み倒してよいなどという法律は、銀行からみればとんでもない法律ですし、株主がわがまますぎるように思う人が多いでしょう。法律を作った人も、そういうことを知った上で、それでも法律を作ったわけで、それには必要があったということです。
パン屋であれば、株主は社長がどういう人か知っていますし、それほど大きな借金があるわけでもないので、株主有限責任の法律は不要でしょう。しかし、電力会社を考えてみてください。100万人のサラリーマンが「ボーナスが出たから10万円で株を買おう」と考えて電力会社の株を買ったことで、あれほど大きな会社が出来ているのです。個々のサラリーマンは、電力会社の社長を直接知っているわけでもなく、どんな仕事をしているかも、詳しくは知りません。ただ「電力会社の株を買うと儲かるらしい」という噂を聞いて、気楽に株を買ったという人も多いでしょう。そんなときに、電力会社が何千億円もの借金を抱えて破産したらどうなるでしょうか。気楽に株を買ったサラリーマンのところに何千億円もの請求書が来たら、どうなるでしょうか。
問題は、そのサラリーマンがかわいそうだということで終わりません。次に誰かが「大勢のサラリーマンからお金を集めて大きな会社を作ろう」と考えたときに、誰もお金を出してくれなくなるのです。サラリーマンたちが「昔、かわいそうな人がいたそうだ。自分はそうはなりたくない」と考えて、お金を出す人がいなくなると、大きな会社が作れなくなってしまいます。それでは日本の経済が発展しないでしょう。
そうしたことを考えて、仕方なく株主有限責任という法律が作られたというわけです。

銀行の立場up
 

株主有限責任という法律があると、銀行としては会社の状態が非常に気になります。金持ちが作った会社だからといっても、会社が破産してしまえば、株主が借金を返済してくれるわけではないからです。
銀行はまず、決算書をしっかり見ます。儲かっている会社か赤字を続けている会社か、資本が十分あるか(資産が負債よりもずっと多いか)を見るわけです。資本が少ししかない(資産が負債よりも少ししか多くない)会社は、少し赤字を出しただけで借金が返せなくなるかもしれないため、銀行はそうした会社には貸出をしたがらないのが普通です。
その他、銀行は借り手から担保をとったり保証人をとったり、踏み倒されないためのいろいろな工夫をしているというわけです。

 
 

今回は以上です。なお上記は、わかりやすさを重んじているため、厳密性に欠ける点があります。厳密性を気にする読者におかれては、上記をそのまま記憶するのではなく、市販のテキスト類を理解するための道具としてお使いください。

   
なお、上記は筆者個人の見解であり、筆者の属する組織などの見解を示すものではありません。また、読者に投資などを勧誘するものでもありません
 
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