ホームへ
景気の見方読み方
Oct.05

2005.10.1

backindexnext
「選挙と政治について」
はじめに> <筆者の政治的な立場> <小泉首相の天才的なセンス
郵政以外は白紙委任> <大統領より強い権限> <将来への問題
おまけ・郵政民営化について

はじめに
  小泉政権を支持するか否かの立場の違いはあるでしょうが、今回の選挙が政治史に残る選挙であったことは誰もが認めるところでしょう。そこで今回は、今回の選挙を含めて小泉政権について考えてみることにしました。
筆者の政治的な立場up
 

筆者は、政治的な信条が強いとはいえません。かつては自民党を支持していましたが、55年体制が崩壊して以降は確固たる支持政党はありません。個々の問題については賛否がありますから、それを総合的に考えて選挙に臨むといった状況です。
小泉内閣の経済政策(構造改革など)については、「言っていることと行なっていることが異なっている。言っていることは極論で支持できないが、実際に行なっていることは現実的で支持できる」という立場です。第一次「骨太の方針」を見たときには、「そのまま実行すれば恐慌が来るかもしれない」という恐怖心に駆られました(2001年10月時点での拙稿 http://www.tsukasaki.net/report/report0110.htmlを御参照)。しかし、その後に採られた政策を見ると、意外なほど現実的なものとなっており、構造改革が軟化したことが景気回復の主因ではないかと考えているほどです(2004年1月時点での拙稿 http://www.tsukasaki.net/report/report0401.htmlを御参照)。結果として「改革がまがりなりにも進み、しかも改革の行き過ぎによる景気の腰折れも回避された」という最も望ましい姿が実現しているわけですから、行なっていることに対しては概ね満足しています。
小泉首相の政治手法については、いろいろと問題は指摘されていますし、たしかに恩を仇で返すようなところがあり、反対者への仕打ちも行き過ぎの感はありますが、そもそも「勝てば官軍」の権力闘争というものは奇麗事ではないと割り切って考えれば、目くじらをたてる必要はないかもしれません。
したがって、以下では政治手法を賛美するわけでもなく批判するわけでもなく、客観的に分析してみたいと思います。筆者は政治には素人ですので勘違いも多いかと思いますが、御笑覧いただければ幸いです。

小泉首相の天才的なセンス
 

小泉首相は、天才的な政治センスの持ち主だと思います。「自らを改革の旗手と位置づけることによって、自らに反対する人はすべて抵抗勢力と定義する」という手法は、ひとたび国民の支持を得れば、これほど望ましいポジショニングは考えられないほどです。彼に反対する人はそれだけで国民の支持を失うことになるからです。
彼が改革家であるのは間違いないでしょうが、いささか羊頭狗肉のところがあります。道路公団の民営化は実を捨てて名をとったものでしたし、今回の郵政民営化も「毒にも薬にもならない代物」でしょう。彼は財政赤字30兆円という公約も守りませんでしたし、第一次骨太方針にある「痛みに耐えて」といったハードランディング路線も大きく後退しています。(筆者はハードランディング路線の後退を批判しているのではありません。むしろ上述のように、経済情勢を客観的に眺めれば、後退してよかったと思っています)。ここが第一のミソです。本当に痛みに耐えて改革を行なえば、改革賛成派の支持は得られても痛みを受ける人々は離反するでしょう。大幅な改革を謳って改革派を見方につけ、実際には痛みの少ない小幅な改革に止めることによって、「被害者」の離反を免れるということができるからです。

郵政以外は白紙委任up
 

今回の選挙で特徴的であったのは、争点が一つだけであったということです。「メッセージを一点に絞り込み、首尾一貫した信念のある政治家であることを印象付ける」ことの有利さを小泉陣営が最大限活用し、それにマスコミが乗ったことによって民主党の主張が有権者の印象に残らなくなったということのようです。
これにより、小泉陣営は勝利を手にしたわけですが、加えて今一つ大きなものを得ました。他の争点に関する白紙委任です。年金問題、少子化問題、増税問題、靖国問題、イラク派兵問題、憲法改正問題、などなどの問題で小泉首相を支持しない人は相当数にのぼると思われますが、こうした人々が、郵政民営化に賛成であるというだけで自民党に投票したことは、小泉陣営にとって画期的なことであったに違いありません。場合によっては相当苦労するかもしれなかった多くの懸案事項について、小泉首相が労せずしてフリーハンドを手にすることになったわけですから。
民主党のマニフェストが迫力に欠けていたことが助け舟にはなったのは確かなようですが、そうでなくても、そもそも争点にならなかったのですから、民主党としては戦いようがなかったということでしょう。

大統領より強い権限up
 

小中学校のころ、「三権分立」「議院内閣制」などに関して、首相は大統領ほど権限が強くないと教わりました。その際、子供心に「多数党の党首と総理大臣が同じ人なら権力が分立していないではないか」と疑問に思ったものです。実際には自民党は派閥の均衡で物事が決まり、政府は官僚の振り付けで動く部分が多かったことから、次第に疑問に思わなくなっていましたが、今次選挙は子供のころの疑問が正しかったことを示してくれました。
総裁が党役員や選挙時の公認候補を自分だけで決めることは、ルール上は可能であっても実際には出来ないことだと思われていました。しかし、織田信長の比叡山焼き討ちと同じで、やれば出来ないことはなかったのです。官僚も、いろいろと抵抗はしてみても、所詮は法的な上司である大臣や首相に正面から戦って勝てるわけではありません。したがって、小泉首相は行政権と立法権を両方とも掌握することになったわけです。
さらに、今次選挙の結果、小泉首相に逆らうと公認されないばかりではなく刺客まで送られるということがわかったのですから、今後は小泉首相に逆らう人はいないでしょう。その意味では、彼は「自民党」を壊したのではなく、「合議制」を壊したということなのかもしれません。こうした状況下、「小泉独裁」などと批判している人も多いようです。

将来への課題up
 

今回に関して言えば、幸いなことに「変人」小泉氏はせっかく獲得した絶大な権力に固執するわけでもなく1年後に退陣するつもりのようですから、「独裁」批判はあたらないでしょう。むしろ、「勝ちすぎて緊張感を失った巨大与党の党首が、大きな政治課題も持たずにレイムダック化し、小泉後継選びが難航して自民党が烏合の衆となる」といった可能性を指摘する専門家もいるほどです。
しかし、将来権力志向の強い「普通の政治家」が小泉首相と同じことをして絶大な権力を握る可能性については、小さくないように思います。今まで皆が「実行できる筈がない」と信じていた選択肢が意外と簡単に実行でき、しかも不思議なほどうまくいくということに人々が気付いた以上、同じことを試みる人は多いはずだからです。コロンブスの卵ということでしょう。
こうした「独裁」政権誕生の懸念を和らげるためには、野党にしっかりしてもらうことが重要ですが、それだけではなく、制度面でも改正が必要な気がします。たとえば、国民投票の制度を設ければ、特定の論点だけで衆議院選挙を行うということが出来にくくなるでしょう。そうなれば、「他のことは何もわかりませんが、郵政民営化には賛成です」というような候補者が刺客として送り込まれることも減るでしょう。
自民党総裁の任期を次回衆議院選挙までと定めることも有益でしょう。与党の党首が交代したら総選挙を行なうという慣例ができれば更によいでしょう。(手続き的には、解散しようとする首相が解散の予告とともに与党の党首選を行い、続投でも交代でも解散して新しい党首が選挙を戦うということになるのでしょう)。
たとえば小泉首相が「増税するか否かは次の総裁が決めることだ」という理由で消費税増税問題に関して白紙委任をとりつけたことに関しては、愉快に思わなかった選挙民も多かったと思います。しかし、だからといって退任がわかっている総裁に無責任な公約を掲げられてもやはり迷惑でしょうから、党内の権力を総裁が掌握するのであれば、その責任において将来についての公約をしっかりと打ち出して欲しいと思います。
それ以外にも種々の改革が有益だと思いますが、とりあえず今回は以上です。

おまけ:郵政民営化についてup
  筆者は郵政民営化にはあまり興味がありません。「毒にも薬にもならない」と考えているからです。旧国鉄と私鉄では生産性やサービスや従業員の勤労意欲に明らかな違いがありましたが、今の郵便局は銀行に比べてサービスが特に劣るわけでもなく、従業員が怠慢なわけでもないでしょう。したがって、「国鉄民営化が成功したから郵便局も」というのは飛躍のような気がします。
「郵便貯金などの資金が民間に流れるようになるから」というのも、理由付けとしては疑問です。第一に、資金を民間に流すためであれば、郵貯資金の自主運用を認めればよいのであって、(あるいは、郵貯資金の運用を民間の投資顧問会社に委託するという手もあるでしょう)、郵政を民営化する必要などありません。次に、日本で最大の資金不足主体は政府ですから、資金を民間に流すことを考える前に郵貯資金が安定的に国債購入に回ることを考えるべきでしょう。更に言えば、プロの銀行員があれだけ不良債権を作ったのに、郵便局員が不良債権を作らずに貸出業務で利益を挙げられるとは到底思われません。
金融以外の点について言えば、たとえば都市部では郵便局がコンビニのように便利になる一方で、過疎地では郵便局のサービスが低下していくかもしれません。
そんなわけで、筆者は郵政民営化については賛成でも反対でもありません。これだけを争点に投票しろと言われても困るというのが正直なところでありましたが、皆様はいかがでしたでしょうか。
  以上です。
------[ ホーム] [ レポートの目次 ] -------
Copyright 2000 Tsukasaki.net All Rights Reserved
For information on webdesign, or problems with this site, send e-mail to [スタジオみと]