| 人民元が2%切上がったことが大きなニュースとなり、その影響が様々に論じられているが、実体経済に関する限り、たかが2%の切上げで目に見える影響が出るとは思われない。マスコミやマーケットエコノミストは「2%だから大きな影響は無い」とは書きづらい立場にあるので、ある程度大きく採り上げているが、実体経済を冷静に見るファンダメンタルエコノミストの立場からすれば、騒ぐほどの事ではないと言えるだろう。
「海の水を一口飲んだら海の水は減るか」という問いに対して「減らない」と答えると誤りだと非難されるが、「減る」と騒ぐ方がよほどミスリーディングである。2%の切上げが実体経済に及ぼす影響についての議論は、これに近いものがあると言えるだろう。円相場が2%以上変動することは日常茶飯事であるが、そのことが日本経済やアジア経済に与える影響について議論されたという話は聞かないのであって、中国の人民元に関してだけ議論されるのは不思議なことである。
もっとも、市場的には大きな影響があり得るだろう。直ちに影響を受けたのは円相場である。理屈からすれば人民元が切り上がったからといって円高になる必要はないのであるが、市場は美人投票の世界であるから、皆が「人民元高は円高材料」と思っていれば実際にそうなるということなのであろう。2%の人民元高に対して円が2%以上高くなったのも、美人投票の世界の「不思議な」出来事だということのようだ。
市場的に一層重要なのは、人民元が更に切上がるという思惑が人民元買いの投機を過熱させるリスクである。「中華思想の国が米国に言われたくらいで人民元を切り上げるはずがない」と思って人民元買いを控えていた投機家が、一斉に人民元買いに参加するかも知れないからである。「固定相場制を続けると人民元切上げを期待した投機資金が流入して(介入を余儀なくされる結果マネーサプライが増えて)中国国内のバブルが拡大してしまうから、これを防ぐために切上げを行なったのだ」といった解説も見られるが、この面では逆効果となる可能性が大きいであろう。(銀行貸出の抑制などで結果としてバブルを防ぐことは可能だと思われるが、リスクが増すことには違いない)。
こうしてみると、中国としては、投機過熱のリスクは覚悟した上で、米国に名を取らせるために2%という文字通り「名ばかりの」切上げを行なったということであろう。世の中では、これを「更なる人民元切上げの第一歩である」と捉える向きが多いようであるが、そうなる保証はどこにもない。それは、人民元がバスケット制を導入したからである
|