| 循環的な景気拡大が続いているというのみならず、構造面でも明るい材料は数多い。不良債権問題自体が完全に解決したというわけではないが、これに起因する金融システム不安は、一時期と比べて大幅に緩和されている。企業の抱える設備、人員、負債の過剰も、企業の努力と景気回復の相乗効果によって和らいできた。不動産価格の下落は全体としては持続しているが、都心の地価は下げ止まって上昇に転じている。こうしたことを考えると、日本経済はバブルの後遺症から脱却しつつあると言ってもよいであろう。
バブルの直接の後遺症のみならず、間接的な後遺症とも言える「極端な悲観論」も影をひそめている。たとえば「構造問題がある限り日本の景気はよくならない」「日本経済はグローバルスタンダードでないからダメなんだ」といった見方が一時期流行したが、最近では聞かれなくなった。景気が現実に回復を続けていることに加え、製造業の復権によって、日本を代表する高収益企業で「グローバルスタンダード」を採用していない例が目に付くようになったこと、などが背景にあるのであろう。
間接的な後遺症の今ひとつは財政赤字であるが、これも悪化が止まり、わずかながら改善の兆しも見え始めている。問題が依然として深刻であることは疑いないものの、方向がプラスに転換したこと自体が大変明るい材料である。
こうした構造面での改善は、循環面での景気拡大と相乗効果を持つことが期待される。景気拡大は、不良債権の回収率向上などを通じて金融システム不安を緩和し、企業の設備、人員に対する過剰感を緩和し、日本経済に対する悲観論を後退させ、人々のコンフィデンスを高めるであろう。財政赤字の縮小を通じて長期金利を低位で安定させ、それが利払い負担の抑制や景気拡大を通じて一層の財政赤字の縮小をもたらす効果も期待できよう。
中国との棲み分けが見えてきたことも明るい材料である。中国製品が濁流のように流入してきた恐怖が一服し、最近では日本製品が品質の高さを武器として中国向けに輸出を伸ばしている。予測期間中(2008年まで)を考えれば日中の技術力の格差は厳然として残るであろうから、低付加価値品の輸入と高付加価値品の輸出という形での国際分業が進展していくことは、双方の経済発展にとって望ましいことと言えよう。
気づいてみれば、過去数年で規制緩和が思いのほか進展し、雇用慣行が変化するなど、日本経済は柔軟性を増している。これも、資源の効率的な利用が可能になったという意味で明るい材料と言えるであろう。
こうしたことを考えると、今回の景気拡大は久々の大型景気となるかもしれない。場合によっては失われた10年の反動として「下がりすぎた株価や地価が戻ってくる」「抑えられていた設備投資が一気に出てくる」といったことも起きないとは限らない。予測期間内には循環的な景気後退もおきるであろうが、底流に大きな改善の流れがあれば、軽微な後退の後に再び力強い回復がもたらされるかも知れない。手放しの楽観が許されないことは当然であろうが、さりとて比較的明るい展望を描くこと自体は決して不自然ではないといえよう。 |