| このように、実態はわかりにくいながらも、諸事情を総合的に考えると、景気が失速する可能性は大きくないように思われます。最大の理由は、今次局面が「景気の過熱」に対する引締めではなく、高成長に付随するアンバランスの是正の局面だからです。
景気が過熱しているという状況は、経済全体として需要が供給を上回り、インフレや人手不足が深刻になることですが、現在の中国においては(食料品を除いては)物価は安定していますし、労働力についても人手不足ではなく失業が心配されているほどです。
こうした状況ですから、景気を悪くさせるための政策が採られているわけではありません。全体の成長スピードに比べて早すぎるところを抑え、遅すぎるところを伸ばそうというなかで、抑制策のところが注目を集めているというわけです。
たとえば、製鉄所の投資を抑制する政策が採られている一方で、発電設備に対する投資は奨励されていますし、不動産開発は抑制されている一方で個人消費の刺激策が採られています。このように、経済全体を冷やすのではなく、バランスの崩れたところを調整しようという政策ですから、用いられている手段としては、需要全体を冷やすための金融引締めではなく、選別的な融資抑制策などが採られているわけです。
しかも、こうした抑制策でさえも近々緩和されるとの見通しが強まりつつあります。失業問題を考えるといつまでも需要を抑制し続けるわけには行かないでしょう。また、現に鉄鋼に対する需要があるのに製鉄所建設を抑制し続けるということも難しいでしょう。融資規制を行なうと、本来は育成しなければならない中小企業にどうしてもシワ寄せが行くという問題もあるようです。
こうしたことを考えると、中国経済が不況に陥るという可能性はあまり高くないと考えてよいのではないでしょうか。
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