ホームへ
景気の見方読み方
May.04

2004.5.1

backindexnext
景気回復と長期金利

はじめに> <景気回復と利上げ> <日銀の立場> 
ポリシーミックス> <長期金利の見通し> <おまけ


はじめに
  景気の回復とともに、長期金利が少しずつ上がってきました。景気の状況などを考えると、急激に上昇してもおかしくない状況ですが、日銀の姿勢などが寄与しているため、上昇のスピードはマイルドなものにとどまっています。今回は、今後の金融政策と長期金利について考えてみましょう。
景気回復と利上げ
  現在の金融政策は、金利をゼロにするだけではなく、世の中で必要とされている金額よりも多い金額を日銀が供給するというきわめて例外的なものですから、普通に考えれば、景気が回復してデフレが止まれば、正常な姿にもどるはずです。金利がゼロだというのは異常なことで、いろいろなところに問題が生じるので、できるだけ早い時期にゼロ金利を解除すべきだからです。
日銀の超緩和が終われば、投資家たちが「他の投資家たちが長期国債を売るだろうから、その前に自分が売ろう」と考えるため、長期国債の値段が大幅に低下する(=長期金利が大幅に上昇する)ことになるでしょう。
ゼロ金利が解除された後も、日銀が利上げをするたびに(あるいは利上げ観測が市場で流れるたびに)長期金利は比較的大幅に上昇していくのかもしれません。市場は日銀の緩和が続くと信じきっているために、日銀の姿勢の変化は市場金利への大きなインパクトとなりかねないからです。
もっとも実際には、日銀の利上げは、景気が回復しているわりには先延ばしされる可能性が大きいでしょう。金利を上げなくても、インフレになる可能性はありませんし、一方で金利を上げれば円高が進んで景気が腰折れしてしまうリスクがあるため、これを避けようとするからです。
実際、日銀は「当分は利上げをしない」と宣言しています。これによって投資家たちに安心して長期国債を買ってもらい、長期金利を低くして景気回復を促進しようというわけです。「景気が回復してきたのだから長期金利がある程度上がるのは自然なことだ」というよりも、「長期金利を低めに抑えたい」ということのようですから、景気の実態と比べると、相当腰の据わった景気刺激策をとっているということになるでしょう。
日銀の立場up
  日銀の利上げが先延ばしになると考える今ひとつの理由は「日銀がかわいそうな組織だ」ということです。日銀は、景気が悪くなると「日銀の金融政策が悪いからだ」といわれてスケープゴートにされる運命にあるようです。日銀が0.25%金利を上げたあとで景気が悪化したことがありましたが、「日銀の利上げが景気の腰を折った」と非難されました。過去の政策金利の変動幅から考えれば、たった0.25%の利上げで経済に大きな影響があるはずがないのに、人々は日銀のせいにしたわけです。また、その後金利をゼロに戻した段階で、景気対策として日銀にできることはすべて行ったわけですが、つい最近まで「日銀の緩和が足りないから景気がよくならないのだ」と言われ続けていました。量的緩和など行っても、喉の渇いていない馬に水を飲ませようとするようなもので、効果がないにもかかわらずです。
こうしたことから、すっかり日銀は弱気になっていて、とにかく非難されないように、たいそう気を使っています。したがって、利上げをしなくてもインフレになる可能性が小さいのであれば、「ゼロ金利の弊害」には目をつぶって利上げを先延ばしにする可能性は高いと思われます。
利上げをしたあとで万が一景気が悪くなればもちろんのこと、そうでなくても倒産する企業や銀行がでてきただけでも「日銀のせいだ」と言われかねません。また、利上げ後に急激な円高が進んだ場合にも非難を受けるでしょう。金利をわずかに上げたところで、本来ならば為替相場には影響がないはずなのですが、為替のプロたちが「金利があがると他のプロたちがドルを売って円を買うだろう」と考えているときには、わずかな金利の上昇でも急激な円高につながる場合がありうるからです。こうしたリスクを考えると、利上げを我慢する方が得であるという「組織としての損得勘定」が成り立つからです。
ポリシーミックスup
 

通常、景気が回復してくると、金融政策が少しずつ引き締められ(=金利が少しずつ上昇し)、財政政策も少しずつタイトになっていく(=財政赤字が少しずつ減らされていく)のですが、今回は日銀が緩和を続けるとすると、金利が上がらずに財政赤字が順調に減っていくという組み合わせ(ポリシーミックスと呼びます)になるかもしれません。
景気が回復すれば、税収が増えますから、財政赤字は減ります。この効果は一般に考えられているよりも大きなものです。まず、景気回復により企業収益が改善しますが、法人税率が高いため、これが税収に大いに寄与します。景気回復によりサラリーマンの所得も増えますが、この分は累進課税なので、所得が増えた以上に税収が増えます。さらに、景気がよいと株価があがり、譲渡益課税などが増えます。地価まで上がることになれば、土地の売買が活発化して取引税や譲渡益税がはいるほか、相続税なども増えるでしょう。
金利が上がらない分だけ景気の回復幅が大きくなります。その分だけ財政赤字の縮小幅も大きくなるでしょう。また、景気が本格的に回復すれば、増税や歳出削減という対策も採られるでしょう。通常は増税や歳出削減は政治的に困難だといわれていますが、今回は財政赤字削減の必要性が国民に認識されていますし、小泉内閣は財政再建にことのほか熱心ですから、増税や歳出削減を断行するかもしれません。もしも増税などの規模とタイミングが非常にうまくいけば、景気が順調に回復し、しかも過熱してインフレを招くことがない程度には景気を抑制するという可能性もないわけではありません。
理屈の上では、「金利は永遠に0.1%に固定して、景気の波は増減税と歳出の増減で調節する」ということも考えられないわけではありません。機動性に問題があるので、ここまで極端なことは現実的ではありませんが、考え方としてはこれに近い姿がイメージされるというわけです。

長期金利の見通しup
  景気回復にもかかわらず、金融緩和が続くとすると、それ自体が長期金利の上昇を抑制する大きな要因となるでしょう。これに加えて、国債需給の面でもプラスの影響(長期金利を抑制する要因)が見込まれます。金融緩和は景気回復を通じて財政赤字を縮小させるため、長期国債の発行額を減らす効果があります。また、財政赤字が市場の予想よりも小さくなれば、長期国債の需給が改善したことを材料として市場心理が好転する効果も見込まれます。
「景気回復により民間の資金需要が出てきて金利上昇圧力となる」ということも、理屈上は考えられますが、現在のように企業が巨額の余剰資金を抱えて借金の返済に邁進している状況を考えると、それほど心配はいらないように思います。
筆者のイメージでは、景気は市場の予想を大幅に上回って改善し、株価も年末には15000円に達するなかで、長期金利は2%程度におさまるのではないかと考える次第です。
おまけup
  現在の長期金利は低すぎると思います。理由の第一は、予想短期金利との裁定に関するものです。長期金利を考える際の一番の基本は「10年間資金を運用するとして、短期国債を買い換えていくのか長期国債を買うのか」という裁定です。現在の長期金利が1.5%だということは、投資家たちが「今後10年間の短期金利が平均すると1.5%だ」と予想しているということになります。しかし、この予想は現在の低金利に目が慣れている人の予想であって、冷静に考えればいま少し高いように思います。人間の想像力は乏しいもので、どうしても現在の状況が将来も続くと考える傾向があるため、これを割り引いて考える必要があるからです。
今ひとつの問題は、予想の範囲を超える大異変が起こる可能性です。年率10%の大インフレが起きて金利が10%になる可能性はありますが、年率10%の大デフレが起きても短期金利はゼロまでしか下がりません。このことを考慮すれば、「予想の範囲内で考えた将来の短期金利の平均」よりも長期金利は高くなるべきだと言えるでしょう。
10年という期間は、人々が想像もしていないようなことが起きるのに充分な長さです。高度成長期の1970年に「今後10年で石油ショックが2回来る」と予想した人はいないでしょう。第一次石油ショック後の1975年に「10年後は貿易黒字が増えすぎてプラザ合意で超円高になる」と予想した人もいないでしょう。第二次石油ショック後の1980年に「10年後はバブルで日経平均が4万円になる」と予想した人もいないでしょう。
筆者も今後10年の短期金利を予想できるわけではありませんが、市場参加者が「今が低金利であることに引きずられて将来の短期金利もそれほど上がらないと考えているとすれば、それは危険だ」ということは言えると思います。
現在の長期金利が低すぎると考える今ひとつの理由は、長期債市場の思惑と需給です。巨額の資金を運用しているプロたちは、毎年の運用成績を厳しくチェックされますので、長い目でみて投資をするということが難しい場合があります。たとえば「長期国債を買うよりも短期国債を買い換えていく方が長い目でみれば得だ」と思っても、今年の運用成績だけを考えれば「長期国債の方が金利が高いので、長期国債を買うべきだ」ということになりかねないわけです。
こうした判断の前提として「今年いっぱいは長期金利が上昇しないとすれば(=長期国債の値段が下がらないとすれば)」という条件がつくわけですが、この条件は「他の投資家も今年いっぱいは大量に長期国債を買うと予想されれば」ということと同じことです。現在のように、どこの銀行も貸し出しが増えない状況では、銀行がお互いに「他の銀行は今年も大量に長期国債を買うだろう。したがって、長期金利が年内に大幅上昇することは考えにくい」と予想しあっているわけです。
このようにして、「長い目で見れば得ではないかもしれない長期国債への投資」をプロたちが積極的に行なっているというのが現状のようです。このことは、現在の長期金利が本来あるべき水準よりも低いということを意味しているわけです。
  以上です。なお、上記は筆者個人の見解であり、筆者の属する組織などの見解を示すものではありません。また、読者に投資などを勧誘するものでもありません。念のため
------[ ホーム] [ レポートの目次 ] -------
Copyright 2000 Tsukasaki.net All Rights Reserved
For information on webdesign, or problems with this site, send e-mail to [スタジオみと]