| 日本の大規模介入については、米国は愉快ではないと思いますが、黙認すると思います。理由の第一は、ブッシュ政権にとって最重要の問題はイラクだということです。米国のイラク政策を支持している小泉首相を為替で困らせたくないという配慮は当然働いているはずです。理由の第二は、日本経済が立ち直ってくれないと世界経済にとって困るので、日本の景気回復の腰を折るような円高誘導は避けたいということです。理由の第三は、製造業向けのパフォーマンスを試みてドル安誘導を行うと、上記のようにそれが株安につながるリスクがあることです。ドル安誘導で選挙前に株価が下がり、ドル安の効果で輸出が増えるのがタイムラグを経て選挙後になったとすれば介入の効果については「世界で取引されている為替の量に比べて介入金額はあまりに小さくて効果がない」「投機資金の量と比べて介入金額はあまりに小さくて効果がない」といった疑問の声も聞かれます。
世界で取引されている為替の量はたしかに天文学的な数字ですが、これに驚く必要はありません。プロのディーラーたちが一日に何度も巨額の売り買いを繰り返している分がすべて計上されているからです。彼らは買ったら売る、売ったら買うことで利益を狙うわけで、買ってばかりいるディーラーはいないでしょう。買ってばかりいるディーラーは、少しでも買ったものが値下がりすると直ちに破産するわけで、そのようなリスクをプロが採るはずがないからです。したがって、彼らの取引は、売買額は巨額ですが、売り買いがおおむね同額であると考えてよいわけです。
一方、広い意味での投機資金は、巨額です。ヘッジファンドなどの「本当の投機資金」に加えて、円高を予想して輸出代金を急いで円に換える輸出企業、円高を予想して(金利を払ってでも)輸入代金の支払いを待ってもらう輸入企業、円高を予想して円建ての預金をしようという米国人、などなどが一斉に行動すれば、相当な額になるでしょう。昨今の介入額が経常収支黒字額を大きく上回っていることを考えても、その規模は推測できるでしょう。
年初から2ヶ月で10兆円という介入規模はたしかに尋常ではありませんし、持続可能性を疑う声があることも事実です。しかし、悲観的な話ばかりではありません。第一は、投機資金の動きは人々の期待で決まるということです。人々が円高になると思うから人々が円を買い、実際に円高方向の力がはたらくというわけですから、人々が円高になると思わなくなるまで徹底して介入をすれば、円買いの投機は止まるかもしれないわけです。最近になって円高が止まって反落している理由の一つは「円高を予想して円を買っていた投資家(および投機家)が、あまりに徹底した介入が行われるのを見て、円高予想を変更して円を売ったため」だと言われています。これは、明るい材料の一つです。
今ひとつの明るい材料は、ドルの方が円よりも金利が高いということです。これは、米国人にとっては、「ドルで預金しておけば利子がもらえるのに円を持っていても利子がもらえないのだから、円高になるという自信がある人だけしか投機をしない」ということです。一方で、日本の当局にとってみれば、ゼロ金利で円を借りて、それでドルを買って預金しておけば利子がもらえるのですから、いくらでも介入を続けようという元気が出ようと言うものでしょう。 |