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景気の見方読み方
Feb.03

2003.2.2

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イラク問題の影響について

はじめに
 

 米国がイラクを攻撃すると世界の景気が悪くなるといって心配する人が大勢います。
91年の湾岸戦争の後に世界の景気が不冴えであったことが一つの根拠となっているよ
うです。そこで今回は、当時のことを振り返ってみましょう。

湾岸戦争前後の世界経済
 

 1990年8月にイラクがクェートに侵攻(湾岸危機)してから約半年後、米国を中心と する多国籍軍がイラクに侵攻しました(湾岸戦争)。ハイテク兵器を駆使した多国籍軍が戦局を圧倒し、短期間で戦争は終結しました。
 原油価格はイラクのクェート侵攻を受けて急騰しましたが、その後徐々に低下し、湾岸戦争の勃発とともに急落し、湾岸危機前の水準に戻りました。多くのイスラム産油国がイラクを非難する側にまわったこと、開戦当初から多国籍軍の圧倒的な優位が伝えられたこと、などが原油価格の安定に寄与したわけです。
 この間の出来事が景気に悪影響を与えたことは間違いありません。原油価格の高騰にともなってインフレ懸念から金融政策がタイト気味に運営されたこと、消費者マインドや企業家マインドが悪化して経済活動が停滞したこと、などが一時的にせよ景気を 圧迫したからです。景気というものは、一度悪化するとスパイラル的に悪化(消費減 →生産減→雇用減→所得減→消費減など)する傾向があるため、湾岸戦争が終了した後も後遺症として景気の下押し効果が残ったということはあるでしょう。
 しかし、「原油価格の高騰が一時的なものにとどまったにもかかわらず、世界経済が 不況からなかなか回復しなかった」のは、「当然の成り行き」ではありませんでした。むしろ、各国それぞれに事情を抱えていたから不冴えな展開になったのだと言えるでしょう。

 しかし、「原油価格の高騰が一時的なものにとどまったにもかかわらず、世界経済が不況からなかなか回復しなかった」のは、「当然の成り行き」ではありませんでした。むしろ、各国それぞれに事情を抱えていたから不冴えな展開になったのだと言えるでしょう。
 米国経済は、湾岸危機前から減速傾向にあり、しかもインフレ懸念から金融政策は引締め気味に運営されていました。こうした状況下で湾岸危機が発生したため、消費者マインドや企業家マインドが大幅に悪化した一方で、金融政策は原油価格高騰に伴うインフレ懸念からタイト気味に運営せざるを得なかったわけです。財政政策も、当時は財政赤字の削減が大きな政策目標となっていましたから、景気刺激のために発動することは容易ではなかったわけです。
 金融政策は、原油価格の落ち着きとともに徐々に緩和されていきましたが、もともと減速傾向にあった景気が短期的とはいえ大きく下押しされたことから、景気悪化のスパイラルが働き、景気は不冴えな状況が続くことになりました。
 ドイツ経済は、さらに特殊な事情を抱えていました。湾岸危機の最中に東西ドイツが統一されたからです。統一ブームによる景気の過熱やインフレが心配されたため、もともとインフレ抑制に極端な熱意を燃やすドイツ連銀が金融引締めを行ないました。
 金融引締めの効果が出てきたころに統一ブームが一巡したこともあり、景気は湾岸戦争終結後に一層悪くなっていきました。
 ドイツが金融を引締めたため、フランスなどは、意図せざる引き締めを強いられました。お互いの為替レートを固定する協定が結ばれていたため、「ドイツと異なる金融政策を採用することでドイツマルクと自国通貨との交換レートが動く」ことを回避する必要があったからです。こうして多くの欧州諸国が不況に陥っていったというわけです。
 日本にも、バブルの崩壊という特殊事情がありました。湾岸危機当時、株価はすでに下落をはじめていましたが、地価バブルを潰すための金融引締めが行なわれていました。バブルを潰すことが目的だったわけですから、湾岸危機があってもなくても日本の景気は悪化していたはずであって、「湾岸危機があったから景気が悪化した」とは言えないでしょう。

今次局面との比較
 

 原油価格については、前回と同様、戦争の危機によって高騰し、戦争がはじまってしまえば速やかに下落するという展開が考えられます。戦争が開始されてしまえば、米軍または多国籍軍がイラクに対して圧倒的に有利な戦いを展開するでしょうから、消費者マインドも企業家マインドも早期に回復してくる可能性が高いでしょう。「何か起きるかもしれない」といった漠然とした不安が緩和されるからです。
 一方、今次局面は、世界的に物価が安定しているため、原油価格がある程度高騰したとしても、金融の引き締めが行なわれる可能性は小さいでしょう。むしろ、減速気味の景気を支えるための金融緩和がなされる可能性の方が大きいのではないでしょうか。そうだとすると、前回起きたことが今回も起きると単純に考えるわけにはいかないでしょう。
 したがって、イラクで戦争がはじまれば、景気にとってはプラス材料として働く可性も高いのではないかと筆者は考えています。

 しかし、だからといって決して景気の先行きに楽観的なわけではありません。
 第一に、戦争がはじまらずに危機感の高まった状態が続くリスクがあります。この場合には、原油価格は高止まりし、消費者や企業家のマインドは必要以上に抑圧された状態が続く可能性が高く、景気へのマイナスは相当大きなものとなりかねません。
 第二に、米国が単独でイラク攻撃に踏み切るリスクがあります。この場合でも短時間で米軍が圧倒的な勝利をおさめるでしょうし、「アラブ産油国が反米感情から対米原油供給を停止する」といった事態にまでは至らないでしょうが、国際政治に大きな爪痕を残すでしょうし、世界的に反米感情が高まるでしょうから、これが市場心理などに悪影響を及ぼすことは充分考えられるでしょう。
 仮に国連安保理が近々イラク攻撃を容認したとすれば、上記のように景気にはプラスの要因となるかもしれませんが、それでもなお景気は回復に向かわない可能性が高いでしょう。米国はバブル崩壊後の緩やかで長い調整過程にあり、イラク問題が解決してもダウントレンド上にあることには変わりがないと思われます。欧州は、各国が財政赤字抑制義務を負っているために、「いったん景気が悪化すると税収不足を補うために増税が必要になり、景気がさらに悪化する」と言う悪循環に陥る可能性が高いで
しょう。日本は構造改革が少なくとも短期的には景気を下押しするでしょうから、当分景気は悪いものと思われます。

 

 以上を総合すると、世の中では「イラク攻撃がはじまると景気に大きな悪影響がある」と考えている人が多いようですが、そうではなく、「イラク情勢にかかわらず、世界的に景気は悪化する可能性が強い。イラク攻撃自体は、国連決議に基づくものであれば、むしろ景気にはプラスかもしれないが」といったところではないでしょうか。

     
  今回は以上です。。なお、上記は筆者個人の見解であり、筆者の属する組織などの見解を示す
ものではありません。また、読者に投資などを勧誘するものでもありません。念のため。 (Feb.2003記)
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