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長期的にみて日本の衰退をもたらすものは、需要不足ではなく、供給力の衰えでしょう。日本経済は、運悪く、三つの衰退要因を同時に抱えているため、これを克服することは容易ではないように思われます。これらがいずれも日本経済が豊かになったことの結果であるということが、ますます気を滅入らせる要因と言えましょう。
最大の要因は、将来の日本を担う若者世代における勤勉という美徳の喪失です。上に述べたことと矛盾するようですが、要するに「過ぎたるは及ばざるが如し」ということです。真面目すぎるのは良くないことでしょうが、不真面目すぎるのは更に悪いことだと言えるでしょう。国民が怠惰である国が長期的に栄えるはずがありません。豊かになってから生まれ育った若者たちに勤勉の重要性を説いても受け入れてもらえないのかもしれませんが、これは国家の将来という観点からは大いに懸念される事態です。「勤勉と節約」が問題だということで「勤勉と贅沢」になってくれればよいものを、「怠惰」になってしまっているわけです。国家がこれを「ゆとり教育」などといって追認・促進しているのですから、何とも不思議な話です。(節約については、若い世代も比較的守っているかもしれません。「何時でも買える」と思っているのか、「見栄とか隣人との比較とかで身の丈以上のものを買いたがることがない」のか、若者たちも意外と質素なのかもしれませんね)。
30年後を考えると、比較的おカネを持っている老人たちが倹約に励んでおカネを使わない一方で、働き盛りの世代が勤勉の精神を忘れているということで、需要と供給が両方とも縮んでいくということになりかねません。需給の均衡という意味では大きな不均衡は起きないかもしれませんが、とても健全な経済の姿とは呼べないでしょう。。
衰退の第二の要因は、既得権の拡大です。経済が豊かになるほど「本当は望ましくないけれど、まあ固いことを言わずに認めてやろう」という余裕が出てくるため、既得権が排除されにくくなり、次第に拡大していきます。長年かけて川底にたまったヘドロのように、大洪水でも来ない限りは蓄積を続けていくわけです。革命や敗戦、大恐慌といった事態が起きれば別ですが、そうでもない限り、既得権が一掃されることは難しいでしょう。小泉改革がどの程度実行されるかわかりませんが、いずれにしても小泉改革だけですべての既得権が排除されるわけではありません。農産物保護といった問題は手付かずですし、民間企業の従業員が有する終身雇用制、年功序列賃金制といった既得権も、どこまで本当に崩れるのかわかりません。組織というものは、「作られた時には目的をもっているが、時間が経つにつれて組織構成員の共同体と化し、組織構成員の幸福が目的化してしまいがち」なものだからです。よほど強靭なハングリー精神を持って改革を推し進めない限り既得権は消えていかないのですが、豊かさの中でハングリー精神を失いつつある日本人が本格的な改革に取組んでいくとは考えにくいでしょう。
衰退の第三の要因は、少子高齢化です。豊かになり栄養状態も医療水準も上がったために日本人が長生きをするようになりました。これ自体はよいことなのですが、マクロ経済的には問題もないわけではありません。少子化の方も、日本が豊かになったことが一因となっているようです。私は不勉強で理由がよくわからないのですが、先進国ほど子供が少ないというのが一般的な傾向のようです。
理由はともかくとして、このまま少子高齢化が進むとすると、今後数十年にわたり、日本は引退した多数の老人を少数の現役世代が支えるという歪んだ人口構成に悩み続けるでしょう。これが巨額の財政赤字やISバランスの悪化などを通じて日本経済の活力を削いでいくことも疑いないでしょう。もっとも、ワーカホリック世代は、「使う人が多くて作る人が少ないなら、俺達老人が働く口があるということだ」と言って嬉々として働き続けるのかもしれませんが。
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