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景気の見方読み方
Jan.02 2002.1.2
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今年の経済はどうなるか
<はじめに> <昨年の景気の回顧> <予測は当たったか> <今年の見通し

はじめに

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。
今回は、新年ですので、昨年の回顧と今年の展望について記してみました。新年早々暗い話で恐縮ですが、ご容赦ください。

昨年の景気の回顧 ページ上部へ
 

 米国経済は昨年3月にピークアウトして以降、企業部門が急速に悪化しました。生産も収益も一直線で悪化したといえるほどです。これに対し、個人消費は相対的には底堅く推移しました。最近ようやく落ち込み始めましたが、企業部門に比べれば相当マシです。その理由としては、@雇用環境が悪いにもかかわらず賃金が上昇を続けており、物価も安定していることから可処分所得が落ち込んでいないこと、A相次ぐ金融緩和や市場のイリュージョンなどで株価や不動産価格が維持されていること、などが考えられます。
 米国経済の悪化は、(1)ITブームの後退、(2)株価の下落、(3)輸入の減少、といった経路で海外経済に大きな影響を及ぼしました。(1)世界的なITブームが後退すると、各国景気を支えてきたIT関連需要が一度に剥落しましたし、(2)米国の株価下落につられる形で諸外国でもIT関連を中心に株価が下落しました。(3)輸入の減少も、米国のGDPの減少幅とくらべて相当大幅なものであったと言えるでしょう。
 米国の輸入が大きく減った理由はいくつかあるでしょう。理由の第一は、そもそもモノの需要の変動はGDPの変動よりもはるかに大きいということです。個人消費でも家賃とか月謝に比べて家電製品の購入の方が景気に影響されやすいでしょう。設備投資は前年比二桁の増減をしばしば経験するわけです。したがって、輸入の変化がGDPの変化よりも大きいこと自体は不思議ではありません。加えて、米国企業が需要の変動の大きそうな財の生産を海外企業に委託してリスクを回避していたということも挙げられるでしょう。

    

90年代の米国企業は、金融業も製造業も、「リスクをコントロールしながら儲ける」という意識が非常に高まっていたわけで、バブルの頂点にあってもなおリスクを海外メーカーに引き受けてもらっていた(もちろん、得べかりし利益を諦めるという対価を払ってていたわけです)ということなのでしょう。脱線しますが、銀行でも、米銀はいかに融資残高を増やさずに利益をあげるかに注力しています。その結果、世界的な大企業の借入れ残高をみても米銀が上位に顔を出さない例が多く見られます。これも得べかりし利鞘を犠牲にしてリスクをコントロールしている例なのでしょう。

 

 米国の輸入が減った今ひとつの理由が、在庫の圧縮です。需要の減退に際して米国企業は在庫を思い切り圧縮しましたから、需要の減退よりはるかに大幅な在庫投資の減少が発生したというわけです。
 米国経済がソフト化しており、モノ作りを海外に任せて(または米国製造業が海外に進出して)いるため、米国におけるモノの需要の減退は、通常の国の減速からは想像できないほど大きなインパクトを海外経済に与えたというわけです。
 
日本経済は、米国経済からの影響を強く受け、急速に悪化していきました。一昨年は株価も高く、企業も増益でしたが、それが嘘のようで、昨年の景気の悪化ペースは過去の景気後退局面においても特に激しいもののうちに数えられています。米国からの影響に加えて、「2〜3年はマイナス成長でもかまわないから・・」という公約を掲げた小泉氏が首相になったことも、景気を悪化させた重要な要因でしょう。「これから景気が悪くなる」と言われれば、人々の財布の紐が締まることは当然で、その結果として政権が見通しとして示していたよりもはるかに激しい景気の後退が発生したということでしょう。

予測は当たったかページ上部へ
 

 昨年は、ほとんどの人が見通しを大きく修正した、エコノミスト業界にとって気まずい年でした。多数説は「米国経済はソフトランディングするだろう。しかし日本経済は低空飛行だろう」といったものでした。私は、「米国経済さえソフトランディングするならば日本経済は大丈夫だろう。しかし、米国経済は相当心配だ」といった立場でした。終わってみれば、「米国経済がダメだったので、日本経済もダメだった」という結果となったわけです。
 日本の景気が悪いという結論だけみると多数説が当たっているようにも見えますが、「前提条件を誤り、それに基づいて結論だけ正しかった」というのは二重に間違えたということかもしれません。特に、多数説が日本経済に弱気であった最大の理由が「企業部門は良くても個人消費が悪いから」というものであり、結果が「企業部門の落ち込みを個人消費が底支えする」というものであったことを考えると、当たっていたとは言いがたいでしょう。
 もっとも、私も決して当たったわけではありません。米国に懐疑的であった点(当ホームページDec00参照)は多数説よりもマシでしたが、米国の景気が後退しても日本への影響はそれほど大きくないだろうと甘く見ていたわけです。
 米国経済の回復シナリオに疑念を持っていたのは、私が米国の専門ではなかったために傍目八目であったという面が強いでしょう。「米国経済を特殊なものだと考えずに、日本と同じようなメカニズムで動いているとすればどうなるはずか」という素直な目で見ていたということです。米国は「需要不足よりも供給力不足によるインフレが気になる」タイプの国なので、米国経済を見慣れた人には「需要不足による景気後退」というものがイメージしにくかったのでしょう。「生産性の向上が続くから景気は大丈夫だ」というコメントがしきりと行なわれていましたが、需要不足を見慣れた私にとっては「なぜ生産性が上がって供給力が増えると景気が大丈夫なのか」がわからなかったため、「それは違うかもしれない」と思っただけなのです。
 米国の減速が日本経済に与える影響については、完全に読み間違いをしていました。米国と日本の景気が連動していたことは過去にはありましたが、最近ではむしろ反対方向を向いていることも多かったので、このことが「日米景気の連動性が薄れている」という思い込みにつながっていたのではないかと反省しています。また、日本経済も昔よりはサービス化が進んでいて、貿易を通じた影響は限定的だと考えたのですが、そうではありませんでした。
 米国企業が需要変動に伴うリスクをアウトソースしていた先がアジア諸国であり、そこが日本の主要輸出先であったということが主因ですが、日本から米国への直接の輸出も大きく落ち込みました。一般論として「GDPに比べて財の消費は変動が大きく、財の消費に比べて設備投資は変動が大きい」わけですが、日本の輸出品は資本財の比率も高いため、米国やアジアにおける設備投資の落ち込みがストレートに日本の輸出減少につながったということなのでしょう。米国減速の影響がアジアというクッションを通って弱まるどころか、増幅されて日本にやってきたというイメージでしょうか。
 小泉内閣が発足してからは、景気が悪化することは敢えて予想するまでもないことでしたし、実際のところ理屈どおりに悪化したわけです。政権の人々は「マイナス成長にはしない」などと言っていましたが、信じていたエコノミストは少ないでしょう。

今年の見通し up
 

 私は米国経済に悲観的です。「山高ければ谷深し」ということ、「需要不足経済において金融緩和の効果には限度がある」こと、「現在検討されている財政政策は採られたとしてもスズメの涙ほどであって景気の方向性に影響を与えるとは思われない」こと、などを総合的に考えると、米国の景気は相当深刻な不況に陥っても不思議はありません。今年後半には上向くと信じている人も多いようですが、私にはどうも根拠がはっきり見えない状況です。
 日本経済は、小泉政権が続く限り今年いっぱい悪化を続けるでしょう。年内に景気が回復に向かうと考える理由はほとんど一つもありません。仮に米国の景気が年後半から回復に向かったとしても、そしてそれが日本経済の方向を転換させることになったとしても、タイミング的には来年にはいってからではないでしょうか。
 これだけ景気が悪化しても小泉内閣がこれだけ高い支持率を維持しているということは、国民が深刻な不況を許容しているということでしょう。問題は、どこまでの不況を視野に入れているのかということでしょう。私個人にとって、今年の最大の関心事項は、国民の小泉政権への支持率が、どこまでの景気悪化に耐えられるのかという点にあります。
 私は、小泉内閣の構造改革について、「改革の内容についてはおおむね賛成であるが、タイミング的には問題だ」という立場です。こうした観点から構造改革の行方も見守っていきたいと考えています。

     
  なお、上記は私の個人的な見解であり、私の属する組織などの見解をお示ししたものではありませんし、読者に投資などを勧誘するものでもありません。念のため。
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