1.米国では企業部門の悪化と個人消費の底堅さが並存。
― 消費が底堅い間に企業部門が立ち直るか否かがポイントに。 |
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米国経済を読みにくくしているのは、企業部門が不振である一方で個人消費が底堅いことでしょう。こうしたスプリット状態はいつまでも続くわけではないでしょうから、これがいずれに鞘寄せされていくのかが注目されるわけです。
どうしてスプリット状態が生じているのかを、私なりにまとめたのが図1です。ユニットレーバーコストが上昇する一方で値上げが出来ないことが企業収益低迷の原因ですが、一方で賃金上昇が個人消費堅調の原因となっているというわけです。
売上が伸び悩んでいる一方で時間あたり賃金が上昇していることが根底にあるわけですが、時間あたり賃金の上昇をタイムラグと考えるか否かが一つの分かれ道と言えるのかもしれません。賃金が下がってくれば個人消費も落ちてくるかもしれませんが、一方で、賃金上昇が個人消費を支え、売上が伸びてくれば、生産性が回復してユニットレーバーコストが低下して企業収益が回復してくるという経路も考えられるからです。
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図1 米国経済の現状
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2.「山高ければ谷深し」か「持続可能な成長」か?
― 日本のバブル後不況とは相違点も多い状況
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さて、米国経済は「山高ければ谷深し」なのかという議論に移りましょう。表1は、弱気派と強気派の主張を私なりにまとめてみたものです。どちらにも一理あるように思いますが、結末は時間が経てばわかるということでしょうか。
日本では「米国のバブル崩壊後の不況は日本の90年代と同じく悲惨なものになる」と考えている人もいるようですが、表2を見る限り、悪くてもそこまではいかないのではないでしょうか。
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表1 |
米国経済は再浮上するか |
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| 先行きを悲観する「弱気派」の主張 |
先行きを楽観する「強気派」の主張 |
| 株高と好況の好循環だったので、逆回転すると大変だ |
株高と好況の好循環は、米国経済の強さの結果であり、今後も続くだろう |
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株高を支えた経済ファンダメンタルズが持続不可能
- 個人の貯蓄率がマイナスなのは異常事態。遠からず消費が減少
- 経常収支の大幅赤字は持続不可能。いつかは調整が必要に
- 好況が持続すれば、遠からずインフレに
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株高を支えた経済ファンダメンタルズは持続可能
- 株高で資産が増えた個人にとって、給料を全部使うのは合理的
- 経常収支の赤字は米国に投資機会があるから。外国からの投資があるので心配無用
- ニューエコノミーで生産性が向上→インフレの心配なし
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| 00年後半以降の景気減速で、好循環が逆転してバブル崩壊へ |
スピード調整を終えた後は、再び成長軌道に戻るはず |
| 金融緩和は「問題の先送り」にすぎない |
金融緩和で着陸時のショックを緩和しているだけ |
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表2 |
日本のバブル期と米国の90年代後半 |
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| 日本のバブル期(80年代後半) |
米国の90年代後半 |
| 株価の上昇と好況が好循環 |
同左 |
| 財政収支が黒字に転換 |
同左 |
| 繁栄の持続を人々が確信(日本的経営は素晴らしいから) |
繁栄の持続を人々が確信(ニューエコノミーは素晴らしいから) |
| 地価が高騰。土地を持っている企業は業績が悪くても株価が上昇 |
地価は比較的安定。株高は企業の本業に着目したものが中心 |
| 発行済み株式数が増加して、バブル崩壊後の需給悪化要因に |
自社株買戻しやM&Aが活発に行われたため、発行済み株式数は増加せず |
| 土地購入資金の貸し出しが活発→銀行の不良債権問題が深刻 |
本業のための貸し出しが中心→不良債権問題は日本より軽微 |
| 家計の株式保有が少ない |
家計の株式保有が多く、日本より資産効果が大きかった模様 |
| 家計貯蓄率大幅プラス、経常収支大幅プラス |
家計貯蓄率マイナス、経常収支大幅マイナス |
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(試論) 米国経済と日本経済を見る視点の相違についての一考察
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| 仮説 |
米国経済は、個人の消費志向の強さなどから、基本的には需要過多の経済である。日本経済は、個人の貯蓄志向の強さなどから、基本的には需要不足の経済である。日本は寒暖の調節をストーブで行う北国、米国はクーラーで行う南国といったイメージか。従って、寒暖調節に関する相互理解は難しい。米国では日本的な感覚での「弱い引き締め」と「強い引き締め」が交互に行われているに過ぎず、日本的な「金融緩和」や「景気刺激策としての公共投資」は行われないからである。 |
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| 米国経済に関して言われていること |
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| 日本経済を見慣れた人が感じる違和感 |
- 成長率を決めるのは需要であって生産性ではないはず。需要が増えずに生産性が上昇すると、失業率が上昇するだけでは?
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| 違和感の除去のために考えられる事柄 |
- 需要はいくらでもあるので、「インフレを起こさずに生産できる分量」に需要を抑えている。したがって、生産性を上げれば需要を抑えずに成長することが可
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| 米国経済に関して言われていること |
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| 日本経済を見慣れた人が感じる違和感 |
- 金融政策は、ゴムひものようなもので、引き締めには効くが緩和の効果は今ひとつではないか?
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| 違和感の除去のために考えられる事柄 |
- 強い引き締めから弱い引き締めに金融政策が変更されれば(ゴムひもの引っ張られ方が強から弱に変更されれば)、押さえ込まれていた需要が復活して成長へ
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| 米国経済に関して言われていること |
- 財政赤字を削減したら、長期金利が低下して民需が刺激されたので、景気はむしろよくなった
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| 日本経済を見慣れた人が感じる違和感 |
- ケインズは景気の悪いときには財政赤字で公共投資を行えと言っていることと矛盾するのではないか?
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| 違和感の除去のために考えられる事柄 |
- 官需が後退した分だけ抑えられていた民需が実現され、結果として経済が効率化して生産性が高まり、成長率が高まった模様。
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「試論」、は、日本経済を担当してきた私が米国経済を担当するようになって以来感じてきた疑問について、私なりに整理してみたものです。一番違和感があったのは、「生産性が向上すると高成長が続く」という米国人の好むフレーズです。日本経済について生産性を議論したのはバブル期で完全雇用状態にあった一瞬だけだったからです。
これが正しいとすると、本題をすこし外れるかもしれませんが、米国人の発想で「評価出来る」とされている日本の構造改革が日本経済にとって望ましい結果を生むか否かわからないということかもしれず、気になるところということかもしれません。
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