ホームへ
ホームへ
景気の見方読み方
Jun.01 2001.6.01
backindexnext
景気見通しなどについて

要旨
 

米国の景気は市場が考えているよりも悪いだろう。小泉改革も、市場が考えている以上の「痛み」があると思われる。日本の景気は、市場が考えているよりも相当悪くなる可能性があり、心配だ。

はじめに up
 

そろそろネタが切れてきましたので、本文は短めにして、後半には経済初心者の方を対象に、「構造問題」という単語の解説をしてみました。ご笑覧いただければ幸いです。

米国経済up
 

景気が減速しはじめた当初は、「IT革命、ニューエコノミーだからソフトランディングだ」と言い、しばらくすると「IT革命、ニューエコノミーだからV字型回復だ」と言っていた人たちは、最近では「個人消費が底堅いから大丈夫」とか「財政金融政策の余地があるのでL字型ではなくU字型だろう」などと言っている。ニューエコノミー論が静かになったのは、生産性の伸びが低下したこともあるが、何と言っても景気を決めているのが需要であって生産ではないということが明らかになってきたからだろう。生産性が高くても、需要が落ち込んでしまえば生産が過剰になるという当然のことが米国でも起きているわけだ。

先行きに関しては、諸説あるが、日本経済を見慣れている私の私見としては、「山高ければ谷深し」という心配がある。具体的には、「設備稼働率が低い時に利下げをしても設備投資が回復しないのではないか」「個人の貯蓄率がマイナスの状態が何時までも続き得ないとすれば、いつかは個人消費が落ちるのではないか」ということだ。

利下げも減税も景気悪化を和らげる程度には役立とうが、私見を前提とすれば、さらに思い切った財政金融政策が必要な局面なのではないか。その場合には「個人貯蓄率のマイナス」「経常収支の大幅マイナス」という問題を「先送り」してしまうことになるが、世界経済に与えるインパクトを考えるとやむを得まい。

日本経済up
 

昨年秋ころは「米国はソフトランディングするだろうし、企業部門は比較的好調だが、個人部門が雇用所得環境の不振から低迷しており、景気は悪化に転じるかも知れない」と言っていた「弱気派」も多かった。しかし、結果は「米国経済は大幅に減速し、企業部門は生産もマインドも大きく落ち込んだ。個人消費は予想以上に健闘しているが、景気全体としては後退寸前の状態にある」ということになった。結果として景気は芳しくないが、弱気派が当たったということではないだろう。

「構造改革をやれ」という声と「景気を回復させろ」という声が両方海外から聞こえてくるが、構造改革は外科手術であって短期的な景気を悪化させるということを認識していない声があるとすれば問題だ。政府は重要な政策の決定を行う前に、「構造改革を行った場合の中期的な経済見通し」と「構造改革を行わない場合の中期的な経済見通し」を内外に示すべきであろう。大手術をする前に「患者の体力を考えた上で、手術の結果はこうなると思う」という見通しを策定するというのはアカウンタビリティーの観点から当然のことであり、「この慢性疾患は健康的ではないから、患者の体力の有無を調べずに外科手術しよう」というのは責任ある政府の考えるべきことではなかろう。

景気悪化の度合いは構造改革の徹底度合いによるので予測は困難だが、来年度にかけて、人々がイメージしているよりは相当悪くなる可能性もあり、心配だ。

(日本の株価)

株価は、改革への期待から上昇しているが、改革が中途半端におわれば失望で売られるだろう。問題は改革が徹底的に行われた場合だ。改革の結果として短期的には大幅なマイナス成長になる可能性も大きいが、市場がこれを「改革に伴う痛みである」と肯定的に捉えるか、「マイナス成長の結果として財政赤字は膨らむし企業倒産増加に伴い銀行の不良債権は増加するし、日本は売りだ」と捉えるかは、状況次第だろう。もっとも、市場では改革のプラス面が注目されている一方で付随する痛みに対する注目度が今ひとつ低いようなので、実際にマイナス成長となった場合の市場の反応は心配だ。

米国の景気は市場が思っているよりも悪いだろう。それが明らかになってくると、米国株の下落に伴い日本株が下落するリスクもあるだろうし、ドル安円高になるとすれば日本企業の収益悪化も心配だ。

おまけ:経済初心者のための用語解説「構造問題」up
 

 「構造問題」という言葉を聞かない日はありません。バブル崩壊後、多額の財政資金を使って公共投資を行っても日本の景気がよくならなかったのは「構造問題」のせいだと言われますし、株価が上がらない時にも「構造問題が解決しないと株価が上がらない」と言われます。小泉首相は「構造改革」を掲げて当選したわけですが、これは「構造問題を解決する」ということにほかならないわけです。では、構造問題とは何でしょうか?
 「構造問題」とは「日本経済が抱える構造的な問題」という意味ですから、使う人によって、何をさしているかが異なります(中には「うまく行かないのは何か原因があるのだろうから、構造問題が原因だと言っておけば嘘ではないだろうし、何も考えていないことがバレないから」ということで使っている人もいるかもしれませんが)。
 誰もが共通して「構造問題だ」と考えているのは「不良債権問題」「財政赤字」「三つの過剰(企業が過剰な設備、人員、負債を抱えていること)」といったところでしょうか。これらは、バブル期の後遺症と位置付けることができるでしょう。
 バブル期に銀行は融資判断が甘くなり、土地神話(土地の値段は上がり続ける)を信じて多額の融資をしましたが、土地購入資金を借りた会社が地価が下がって返済できなくなった例なども多く、銀行の融資の中には焦げ付いているものも多いのが実態です。
 バブル後の不況に対処するため、政府は毎年のように多額の借金をして公共投資を行い、景気刺激に勤めましたが、バブルの後遺症が大きすぎたために景気はなかなか回復せず、毎年の借金が積もり積もって巨額に上っているというのが財政赤字の問題です。
 バブル期に、企業は「日本経済の繁栄は永遠に続く」と考えて、莫大な借金をして大きな工場を建て、大勢の社員を雇いましたから、その後の不況で売れ行きが落ちたときにこれらが三つとも過剰になったわけです。
 構造問題という言葉を狭い意味で使う人は、こうした問題を重視しますが、構造問題という言葉をより広い意味で使う人も多いので、注意が必要です。広い意味で使う場合には、「日本の経済は、海外と比べると非常に特殊な仕組みや慣行が多い。こういうものを国際的な標準(グローバル・スタンダード)に近づけていく必要がある」という発想から、日本的なものを広く「構造問題」と呼ぶことが多いようです。
 株式の持合いはコーポレート・ガバナンスの観点から問題だ(株式を持ち合っていると、お互いの社長同士が馴合う傾向があり、だれも社長を厳しいチェックをしなくなる)、規制が多すぎて自由な競争が妨げられていることが問題だ、などという点がしばしば指摘されています。
 「構造問題が何時までも解決されていない」というのは事実ですが、いずれの問題も放置されているわけではなく、少しずつは対応策が採られているわけですが、問題が大きすぎて現在のペースでは解決に大変長い時間を要するものと思われます。
 銀行の不良債権は、銀行の毎年の利益の範囲内で償却していくのが原則です。そうでないと銀行の自己資本が減ってBIS規制などが問題となるからです。従って、毎年の処理額には限度がある一方で、不良債権の金額が巨額に上る上に、不況が続くと新たに返済が出来なくなる借り手も現れてきますから、処理には長い時間がかかっているわけです。
 財政赤字については、毎年すこしずつは赤字額がへってきていますが、あまり急いで財政赤字を減らそうと思うと公共投資が出来なくなって失業が増えたりしますから、これも時間がかかっているわけです。
 企業の三つの過剰も、リストラは峠を越えましたし、バブル期に出来た設備は徐々に耐用年数が過ぎはじめていますし、企業が利益を借金の返済に優先的に回していることから借金も減りつつあります。しかし、もともとの過剰が大きかったため、まだまだ時間はかかりそうです。
 株式の持ち合いは、最近急速に減ってきています。お互いに持っている株を市場で売るという合意が出来やすくなって来ているからです。しかし、一度に大量の売りが出ると株価が下がるので、売りたくても売れないものが多いのが実情でしょう。
 規制の緩和も、ある程度は進み始めていますが、弱者保護の要請や役所の規制権限への執着などもあるようで、ペースは遅く、まだまだ時間はかかるでしょう。
 こうした問題は、放置しておくとさまざまな困難をもたらす可能性があるので、出来るだけ早期に解決することが望ましいことは当然ですが、一方で解決には痛みを伴うものが多いため、解決を急ぎすぎても問題を生じる場合があり、どのようなペースで進めていくべきか、難しいところでしょう。

 わかりやすく解説しようと試みましたが、やはり難しい単語がたくさん出てきてしまいました。中に出てきた単語については、折をみて解説していきたいと思います。

     
  なお、上記は私個人の見解であり、私の属する組織などの見解を示すものではありません。また、読者に投資などを勧誘するものでもありません。念のため。(Jun.01記)
------[ ホーム] [ レポートの目次 ] -------
Copyright 2000 Tsukasaki.net All Rights Reserved
For information on webdesign, or problems with this site, send e-mail to [スタジオみと]